エゼルレッド無思慮王(無策王) ヴァイキングに王位を奪われた王

イングランド王
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イングランド王のエゼルレッド2世(在位:978-1013、1014-1016)は、無思慮王や無策王という不名誉なあだ名がついています。

エゼルレッド2世はイングランドの歴史上、初めてヴァイキング(デーン人)に王位を奪われた王です。

エゼルレッド2世がどのように王位を奪われたのか、なぜ無思慮王(無策王)のあだ名がついたのか、についてご紹介いたします。

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無思慮王(無策王)の名が付いた理由

エゼルレッド無思慮王は度重なるデーン人の襲来に困り、簡単に退去してもらうために毎度大量の銀を支払いました(デーンゲルドと呼びます)

しかし、度重なる襲来に財政も厳しくなり、1002年にイングランドに在住するデーン人たちを大量虐殺してしまいました(聖ブライスの日の虐殺)

当時のデーン人の王は、デンマークやノルウェーを治めていたスヴェン1世でした。スヴェン1世はヨーム戦士団などを引き連れ、虐殺の復讐としてイングランドに襲来しました。

エゼルレッド2世の無思慮なデーン人虐殺は、逆にデーン人のイングランド侵略に拍車をかけるものとなってしまい、逆効果となりました。

このように、エゼルレッド2世はデーン人の襲来に対して何も策を立てず単に銀を支払い続け、浅はかにもデーン人を虐殺してしまったことから、無思慮王(無策王)の不名誉なあだ名がつきました。

※デーンゲルドとしてデーン人に支払った銀の総額は100トン以上で、現在の銀価格でも約70億円以上の高額となります。当時の貨幣価値が現在の5000倍と仮に考えると、とてつもない金額となります。

自分は亡命してイングランド王位を明け渡す

デーン人の襲来に対して2点だけ手を打ちましたが、しかし何の効果もありませんでした。むしろ、よりデーン人の襲撃を容易にしてしまいました。

・デーン人の襲来はフランスのノルマンディーを拠点にしていました。このため、エゼルレッド2世は、ノルマンディー公リシャール1世の娘エマと政略結婚をして、デーン人たちの拠点化を防ごうとしました。しかし、なんの効果も得られませんでした。

・デーン人の襲来に対抗しようと、100隻もの大艦隊を作りました。しかし、エゼルレッド2世は自分よりずっと優秀は息子アゼルスタンを疎ましく思い遠ざけました。家臣たちは、アゼルスタン派とエゼルレッド2世派に分かれて争い、アゼルスタン派の有能な戦士ウルフノースは80隻の船を焼き尽くし、20隻の船を持って国外脱出しました。

この愚かな状況を見たスヴェン1世は大規模なデーン軍団をイングランドに送り込みました。

1013年の襲来の際に、エゼルレッド2世はイングランドを放棄して、妻エマの実家であるノルマンディー公国に亡命してしまいました。

こうして、エゼルレッド2世に代わり、スヴェン1世がイングランド王となりました。

復位したエゼルレッドであるが

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ところが、イングランド王となったスヴェン1世は1か月ほどで亡くなってしまいます。これを見たエゼルレッド2世は喜んでイングランドに戻り、復位します。

しかし、人物的にも魅力のないエゼルレッド2世には、もはや権力は残っていませんでした。

一時期はイングランド側に金で雇われていた、ヨムスヴァイキング軍団のトルケル(Tokel the tall)はエゼルレッド2世を見限り、デンマーク側に戻っていました。また、イングランドで有力者であったマーシア伯のエアドリックも寝返り、エゼルレッドは苦境に立たされていました。

この状況の中で、スヴェン1世の息子クヌート1世は1016年にイングランドに襲来し、再びデーン人にイングランドを奪われるのは秒読みの状況でした。

そのなか、1016年にエゼルレッド2世は病死しました。

※その後、エゼルレッド2世の息子エドマンド剛勇王がイングランド王を継承し、果敢に戦い、クヌート1世を苦しめました。しかしついに敗れ、再びクヌート2世がイングランド王となりました(1016年)

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参考図書:この本は良く分かりおススメです!

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