中世ヨーロッパの物価と人々の稼ぎと暮らしを考える

スポンサーリンク

f:id:t-akr125:20180819113709p:plain

こんにちは、たなかあきらです。

中世の人々はどの程度の給料をもらい、どんな暮らし(生活水準)をしていたのでしょうか?

13~15世紀辺りの中世イングランドを中心に、当時の各職業の給料、当時の物価を比較し、暮らしぶりを推測してみました。

 

👉コチラもどうぞ

・中世の暮らし カテゴリーの記事一覧

 

イングランドでの貨幣社会のはじまり

11世紀にウイリアム征服王によってイングランドに封建制が持ち込まれた際には、物々交換の社会でしたが、13世紀になると人口が増加し次第に貨幣社会へと変わっていきました。

また、羊の飼育数も増加して羊毛貿易は盛んとなり、フランドル地方(現在のベルギー)から商人が大勢訪れて羊毛の買付けをするようになり、貨幣の需要も高まっていきました。

 

  

当時の貨幣価値は

1シリング=12ペニー、1ポンド=240ペニー、1ペニー=3000円、1シリング=3万6000円、1ポンド=72万円と想定しました。

 

 

中世イングランドの各職業の稼ぎ 

それぞれの職業の稼ぎを一覧表にまとめてみました。日当より、20日労働の場合の月収を計算して、円に換算しました。

イングランド国王の収入はともかくとして、かなりの格差社会であることが分かります。従軍すると給料は高く、特に騎士以上の上級軍人になると、かなりの稼ぎです。

また戦いに必要な専門的な技術を持った職業も、そこそこの稼ぎであることが分かります。

 

これに対し、召使や農夫(特に土地を持たない小作人)は、これで生活が出来るのか、というくらい給料が低いです。

この稼ぎで、生活に必要な食料を手に入れ、十分に暮らせるのでしょうか?

職業 日当(ペニー)

月収換算(20日労働、万円)

備考
◆エドワード3世 年収3万ポンド(約216億円)  
◆ジョン王統治時代の(1199~1216年頃)海軍兵士の給料
提督 24 144  
艦長 12 72  
掌帆長 7 42  
水兵 3 18  
◆1416年のイングランド軍の給料
守備隊長 80 480 3か月で4800万円ボーナス
騎 士 24 144 3か月で240万円ボーナス
騎 兵 12 72 3か月で240万円ボーナス
クロスボウ兵 10 60  
クロスボウ兵② 8 48  
騎馬の弓兵 6 36  
大 工 12 72  
石 工 12 72  
鉛管工 12 72  
瓦職人 12 72  
砲 手 12 72  
砲手の助手 6 36  
◆1390年頃のイングランドの各職業の給料
上級法廷弁護士 225 1350  
礼拝堂の僧侶 4 24  
召使 1 6  
農夫(豚飼育) 0.3 1.8  

 

中世イングランドの物価

 

f:id:t-akr125:20180819113753p:plain

 

中世イングランドの物価を示します。日本円にも換算してみました。

当時の人口や各生産量、需要と供給など商品価値も異なるので、一概には言えないと思いますし、貨幣価値の換算も同じレートが妥当かは分かりません。

参考までに比較していただけると良いと思います。

 

品 物 数 量 金額 円換算
◆1256年のドイツ市場価格の例  
牛肉・羊肉 2.5ポンド(818g) 1ペニーヒ 1830円/kg
山羊肉 3ポンド(981g) 1ペニーヒ 1530円/kg
獣脂 1ポンド(327g) 1.5ペニーヒ 690円/100グラム
上質のソーセージ 中くらいの大きさ 0.5ペニーヒ 750円/本
粉をよくこね、塩を利かし、
ふるい分けたパン
2個 1ペニーヒ 750円/個
イタリアのワイン 70リットル 60ペニーヒ 1ボトル(750ml)960円
ビール 70リットル 18ペニーヒ 1瓶(633ml)245円
◆1360年頃のテムズ川流域の市場価格例  
ローストマトンの肩肉又は脚 2.5ペニー 7500円
雄鳥を詰めたパイ 7~8ペニー 21000~24000円
焼いたガチョウ 1羽 7ペニー 21000円
豚の丸焼き 1頭 8ペニー 24000円
焼き鳥 1羽 0.8ペニー 2400円
ロースト鳩 1羽 0.8ペニー 2400円
◆イングランドの生活必需品の価格例  
農民用の田舎家の家賃 月額 1.5万円
商人の家賃 月額 18万円
農夫用のリネンシャツ 24000円
農夫用のチュニック 11万円
貴族用のガウン(流行品) 720万円
◆13世紀~15世紀にかけてのヨーロッパ小麦の平均市場価格  
小麦 291リットル ※平均10.8シリング 2670円/kg

※2~20シリング(500円/kg~5000円/kg)ほど季節によって変化(収穫直後と端境期)

 

イメージ的には、肉は今より高そう、ビールやワインは安そう。家賃は同じくらいでしょうか、服はとても高価ですね。

 

ヨーロッパの主食となる小麦の価格を見ますと、13世紀~15世紀にかけては、1クウォーター(291リットル)で約10.8シリングとなります。

1シリング=3万6000円、小麦2リットル=1kgで計算しますと、中世の小麦価格は約2670円/kgとなります。

 

しかし、一年の中でも価格は大きく変動しており、例えば2~20シリング(500円/kg~5000円/kg)ほど季節によって変化していますので(収穫直後と端境期など)、単純な比較はできないと思います。

ちなみに、30年8月の国際小麦価格は2.204ドル/kg(約225円/kg:農林水産省データより)となっており、現在より小麦の価格は高そうなイメージです。

 

中世イングランドの人々の暮らし

f:id:t-akr125:20180819113849p:plain

 

中世の人々にとって、小麦はとても高価で、白いパンは上流階級しか手の届かないものでした。

このため、多くの農民たちはライ麦、大麦を育ててパンにしました。不作時には、まめやドングリなどもパンに混ぜていました。

 

また、肉類も高価なため貴族など上流階級の人々のみ食べることが出来き、農民などはめったに口にすることが出来ませんでした。

このため、貧しい人々は野菜中心の食生活となっていました。貴族の人々は肉ばかりで、あまり野菜を食べていなかったようで、貧しい人の方が食事のバランスが取れていたかもしれません。

 

服もとても高価なものであったと思います。ですので、一着を擦り切れるまで、擦り切れても繕って、長年着ていたのではないでしょうか。

(日本も昔はおそらく服は大切に着ていたのだと思います。40年以上前でも、服や下着がほころびたら、繕ってきていました)

 

中世の貧しい人にとって収入は少ないですし、お金を出して買おうと思うと、とても高いので、多くの日用必需品や食料は、貧しい人ほど自給自足だったのではないかと思います。 

 

👉参考記事

・中世ヨーロッパの食事 貴族と農民の違い

・中世ヨーロッパの庶民の服装、農民と農奴 

 

参考:

中世ファンタジーの世界

ヨーロッパの中世

Medieval Prices and Wages – The History of England

世界の穀物需給及び価格の推移:農林水産省

  

参考)中世のお城建築費

ビューマリス城の建築には週に2625人程度の石工や採石者や労働者が働いており、一人当たり270ポンドの人件費がかかったとされています。当時の270ポンドを現在の貨幣価値に関すると、日給約15,000円程度になります。

 

この計算で、日給15000円で2625人が週休2日で1年働くと、約100億円の人件費がかかります。ビューマリス城は、工事中止までに11000ポンド(現在の価値で約80億)使ったとされており、概算はほぼあっていると思います。

 

イングランド王エドワード1世が同時期に建てたお城を見ますと、カナーヴォン城(22000ポンド、約160億円)、コンウィ城(15000ポンド、約110億円)、ハーレック城(8200ポンド、約60億円)の建設をしており、10年程でお城建設に400億円ほど使っていることになります。  

 

👉参考記事こ
ヨーロッパと日本のお城の建設費は 国家予算と人件費で考えた

参考)中世の戦争費用

 

人件費だけを考えてみましょう。例えば、騎士の給料を月給240ペンス(日給12ペンスで20日労働。約72万円)と仮定します。

 

1万人の軍隊を形成し1か月戦死者ゼロで戦うと、72億円の費用が掛かり、1年となると約860億円もの莫大な費用が掛かります。
この規模の戦争では、1~2か月程度の人件費でお城が建ってしまうほどの費用になります。戦争は短く効果的に終わらさなければ、財政が持ちませんね。

 

👉ヨーロッパと日本のお城の建設費は 国家予算と人件費で考えた

 

中世の暮らしに関するおススメ記事 

👉コチラもどうぞ

・中世ヨーロッパの庶民の服装、農民と農奴

・中世ヨーロッパ 貴族や王の服装(時代別)

・中世ヨーロッパの食事 貴族と農民の違い 

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました