話題が満載すぎるウェールズを見守る王、という内容で、ラウェリン大王について、シリーズでお話をしております。
ラウェリン大王の特徴について簡単に表現しようと思っても、なかなか簡単になりません。こんな感じで、つかみどころがない、大王です。
・13世紀に活躍し、現在もウェールズの街を見守っている男
・史上例を見ない暴君をやっつけて、雪辱を果たした男
・敵が味方に、味方が敵に、昨日の友は今日の敵だった男
・絶体絶命のピンチを、嫁に助けられた男
・悪王で有名なイングランド王と渡り合った男
・次男を溺愛しすぎて、世の中と喧嘩した男
今回は、3つ目の内容についてのお話です。
敵が味方に、味方が敵に、昨日の友は今日の敵
味方が敵に
「12世紀末~13世紀初めのウェールズ。ラウェリンはグウィネズ国を統治し始めましたが、周りには多くの敵がいました」
<ラウェリン殿。ワシに援軍を送り、憎っくきイングランドの侯爵を退治してウェールズの団結を図ろうではないか>
「ラウェリンが統治するグウィネズの隣国にポウィスという国がありました。ポウィス国の王グウェンウィンウィンは、ウェールズに領土を持つイングランドのウィリアム・デ・ブラウズ侯爵を追い払い、ウェールズのリーダーになろうとしていました」
<分かりました。私もグウェンウィンウィン殿に加勢いたします>
「ラウェリンはグウェンウィンゥインと同盟を結び援軍を送りました。しかし、グウェンウィンウィンはウィリアムに大敗し、勢力を大きく落とすことになったのです」
<ウェールズのリーダーはグウェンウィンウィンじゃなくて、ラウェリンにしようぜ>
<賛成、賛成!>
「これに腹を立てたのが、グウェンウィンウィン。オレがウェールズのリーダのはずが、ラウェリンに横取りされた。怪しからん! とばかりに、二人の関係は悪化してしまいます。ついに1202年にラウェリンとグウェンウィンウィンの間で戦争が勃発します」
<どうだ、まいったか!>
<うぬぬぬ、今回は負けた。次回はそうは行かぬぞ!>
敵が新たな味方に
「ラウェリンはグウェンウィンウィンを打ち負かし、ウェールズでの地位を固めていきました。そうすると、次に目が行くのがウェールズの外敵との関係です。当時の外敵と言えば、真っ先に上がるのがイングランドのジョン王でした」
<ジョン王殿、このラウェリンはジョン王殿に忠誠を誓いますぞ。末永く良好な関係を築き、両国の繁栄に力を尽くしましょう>
<ラウェリン殿、これは有難い。貴殿は何とも頼もしい若者だ。両国の同盟の暁に、我が娘ジョアンと嫁がせよう>
<は、有難き幸せ>
「これに益々腹を立てたのが、グウェンウィンウィンでした。グウェンウィンウィンはジョン王とも対立したため、ラウェリンの攻撃を受け領土を奪われていきました」
<グウェンウィンウィン殿、無駄な抵抗はやめたまえ。おとなしく、ワシの傘下に入らないか>
<くそっ、ラウェリンの奴、今に見ていろ。ぎゃふんと言わせてやる>
「ラウェリンはさらに同盟を結んで、平和的に影響力を広げていこうと考えました。その相手先は、かつて対立したイングランド侯爵のウィリアムでした。しかし、この同盟がいけませんでした」
味方が敵に、敵も敵に
<なんだと! ラウェリンがワシの天敵、ウィリアムと同盟を結んだ、だと? 許せぬ!>
「そのころ、イングランドのジョン王はウィリアムと関係が悪化し、対立状態にありました。ジョン王は、ちょっと前に対立したウェールズのグウェンウィンウィンとも同盟を結び、ラウェリンに攻撃を仕掛けてきました。この動きを見て、ウェールズ各地の統治者たちもジョン王側についてしまいました」
<なんだと! みんなジョン王に味方してしまった・・・俺は一人孤立状態だ。どうしよう・・・>
「1212年、多数のウェールズ軍を率いたジョン王にラウェリンは完敗し、領土の多くを取り上げられてしまいました」
<ラウェリン、お仕置きだ。ワシに盾をつくとどうなるか、思い知ったか>
<ははは、ラウェリンよ、思い知ったか。グウェンウィンウィンも見くびるなよ>
敵になった味方が、また味方に
「ところが、ジョン王は稀代まれなる悪王。無駄な戦いに、そのたびに課せられる重い税金。ジョン王に味方した諸侯や統治者たちからは不満の声が上がり始めました」
<ジョン王なんか相手してられんわ。味方になったのが間違いだった。オレはやっぱり、ラウェリンの味方に戻るわ>
<そうだそうだ。やっぱり、ウェールズ人はウェールズ人の味方にならなきゃ、いけないな>
「一時はジョン王に味方したものの、ウェールズの統治者たちは皆、ラウェリンの味方になりました。その中に、ラウェリンのライバル、グウェンウィンウィンも含まれていました。さらに、不満を持つイングランドの諸侯たちも、ジョン王と対立し、ラウェリンを支持するようになりました」
<やった! これでジョン王を逆にギャフンといわせたぞ!>
「イングランド内やウェールズの不満を和らげるため、とうとう1215年にジョン王はマグナカルタを制定しました。ラウェリンに対して領土を返却し、ラウェリンの統治権を認め、戦いで拉致していたラウェリンの息子たちを含む人質も解放したのです」
よかった、よかった。
追伸、あきらめない男
「グウェンウィンウィンは再度、ジョン王の手下になり、ラウェリンに攻撃をしかけたのです。しかし、ラウェリンはウェールズの各統治者の協力を得て、グウェンウィンウィンを永久にウェールズから追放したのでした」
次回に続く
※ジョン王に関する記事
※これまでのラウェリンのシリーズ記事
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