こんにちは!ウェールズ歴史研究家のたなかあきらです。
ランチェスターの法則、ランチェスター戦略ってご存知でしょうか?
ランチェスターの法則は、イギリス人のF.W.ランチェスターが第一次世界大戦が行われたときに提唱した法則で、勝つための戦闘モデルです。
このランチェスターの法則を用いて、現在のマーケティングや経営などのビジネスに勝ち残るための戦略に活用したものを、ランチェスター戦略と言います。
僕が多くを語っているアーサー王の戦い方をみていると、実にランチェスターの法則で説明ができることが分かりました。
また僕の実体験のビジネスでも、アーサー王の戦い方にとても似てうまくいっている例があり、ランチェスターの法則的にも説明がつきました。
という内容で、今回はお話をさせて頂きます。
<登場人物>
ウェールズの歴史にやたらと詳しいワタル。寡黙であるが歴史になると話が止まらなくなる。
歴史に詳しくないアサオ。心は優しいが、かなり小心者。
語り手のジェイムス。親切で気の良いお兄さん。
ランチェスターの法則とは
まずランチェスターの法則について簡単に説明いたします。
ランチェスター法則は戦争の際、両軍の戦闘力を推測していずれが勝つ可能性があるのかを比較する
その戦闘力は武器の性能と兵力数で決まるという定義されます。
戦闘力=武器性能×兵力数
つまり武器の性能(武器自体の性能または使う人の腕前)
どうです?理解できます?
2つのランチェスターの法則
では、もうちょっとだけランチェスターの法則について説明しますね。
ランチェスターの法則は基本的に2つあります。この2つの違いは戦い方の違いによるものです。今回はランチェスターの第一法則を中心にお話ししますので、第二法則は流していただいて良いです。
ランチェスターの第一法則
一対一が戦う一騎討ち戦、狭い範囲で(局地戦)、
先ほど上で説明した内容は、
戦闘力=武器性能 × 兵力数
なるほど。同じ兵力数なら武器性能が高いほうが勝ち、同じ武器性能なら兵力数が多いほうが勝つということだな。
ランチェスター第二法則
近代的な戦いの場合に適用するルールをランチェスター第二法則と
第二法則の場合は以下の式で表されます。
戦闘力=武器性能 × 兵力数の2乗
ふむふむ。同じように武器性能が高いほうが有利だけど、
小が大に勝つ3原則
これまでの内容をみると、兵力が多くて強い武器をもっている、つまり強いものや数が多い方が勝つ、と言っているように思えるな。弱いものや小軍が勝てる方法はないのかね。
兵力数が少ない軍が勝つには、つまり小が大に勝つための方法は、このランチェスターの法則から考えることができます。
第一法則、第二法則共通して言えることは、武器性能を上げることです。
(第一法則では兵数以上に上げ、
武器性能を上げる方法について、
・奇襲の原則(一騎討ち戦、局地戦、
・武器の原則(武器自体の性能を兵力比以上に高める)
・集中の原則(局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する)
分かりいただけましたでしょうか?
ぼく、わからなくなってきました~
そろそろ出番だな。じゃあ、歴史を使って説明するよ。
お得意のアーサー王でな。
ランチェスターの法則をアーサー王の戦い方で分かりやすく説明
イギリスの伝説の英雄、アーサー王の戦い方を分析していると、多くの場合にランチェスターの第一法則で説明がつくことが分かったんだ。
アーサー王って伝説の物語ですよね。そんな昔々の戦いかたが、わりと最近できた法則に当てはまっちゃうんですか。
戦争の戦略は今も昔も基本は同じさ。アーサー王の代表的な戦いの一つ、べドグレインの戦いで説明しよう!
アーサー王は若くしてブリタニアに王になったけれど、国内にはアーサー王に敵対する諸侯たちが多くいたんだよ。11人の諸侯たちが反対勢力を作り、アーサー王に戦いを仕掛けたんだ!
<さらに登場人物>
アーサー王
円卓の騎士
奇襲の原則:夜討ちで無力な敵を攻める
アーサー王、敵の北軍の総勢は5万3000、いや6万にも兵力は上っています!
むむ
これに対し、我らは勇敢な円卓の騎士らが集まりその数2万程度。兵数では圧倒的に北軍が有利でかないそうもありません!
むむむ、まともに戦っては勝ち目はないな。まずは敵の情報を探ろう。
べドグレインの戦いが始まる前の兵数は、アーサー軍2万VS北軍6万で、アーサー王の兵数は北軍の約3分の1。ランチェスターの法則で考えても、武器性能が同じなら戦闘能力も3分の1なので、勝てる可能性は低いんだ。
まず、斥候兵を出して国中を偵察させて敵の情報をつかみ、隙を見つけよう。
アーサー王!北軍の斥候兵を捕らえて進軍のルートを白状させました。
よくやったぞ。これで、敵のルートは押さえたな。
夜、あそこにキャンプを張るようですよ。
うむうむ。陰に潜んで、合図をしたら攻撃を仕掛けるぞ!
よし今だ!攻撃開始!
アーサー軍は敵が寝静まったのを見計らい、一気に攻撃を仕掛けました。不意を突かれ戦える状態にない北軍は大きな打撃を受けて、生き残った者は逃げ出しました。アーサー軍はほぼ無傷でしたが、北軍は一万人もの兵数を失いました。
やった!上手くいった!兵数で勝てない時は、相手の戦闘力を封じ込める夜討ちや奇襲に限るな。
アーサー軍は夜討ちによって北軍の兵数を減らしにかかったんだな。
寝静まり戦闘力がほぼゼロの北軍を3000人のアーサー軍はコテンパにやっつけ、その結果北軍は兵数を1万減らしたので兵数は下記になりました。
アーサー軍:2万、北軍:5万
ランチェスターの法則を考えても、敵の力が発揮できない夜討ちや奇襲は効果的だな。
武器の原則:やはりエクスカリバーの様な宝刀は効果的
我が軍は2万、敵の北軍はまだ5万で、以前大きな開きがあります。どうやって攻めましょうか?
もう、夜討ちはできないな。次はこの手でいこう。2万の軍勢を二手に分けて、一万は茂みに隠れていてくれ。一万で敵に突っ込むぞ!
アーサー王を含む一万の軍は5万の北軍に向かって行きました。アーサー軍は一万と少数ながら果敢に戦い一進一退を続けました。
本線の戦いが始まる前の両軍の兵数は下記です。
アーサー軍:1万(1万待機)
北軍:5万
この戦いでアーサー軍は互角の戦いをしました。北軍の損失は2万5千、アーサー軍の損失を約8千と想定してランチェスター第1法則に当てはめると、アーサー軍の武器性能は北軍の3倍となります。アーサー軍はかなりのツワモノ揃いだったと考えられます。
さすが、アーサー王と円卓の騎士っていうところですね。
そう、その結果
アーサー軍:5千(1万待機)
北軍:2万5千
とかなり敵の北軍の数を減らすことができたんだ。
そういえば、アーサー王はエクスカリバーっていうすごい剣をもってたと聞きました。そのエクスカリバーはどのくらいの武器性能をもっていたのですか?
そうか、今はなしているべドグレインの戦いはエクスカリバーを使わなかったな。他のベイドン山の戦いでアーサー王は天下宝刀のエクスカリバーを使って、一人で470人のサクソン人をやっつけたそうだ。
ということは、エクスカリバーを使えばもっと簡単に勝てたと思いますが・・・・・・
効きすぎる特効薬はいつもは使えないってことかな。ほら、夜討ちや奇襲も毎回は使えないしな。
集中の原則:敵勢をまっぷたつに斬る
アーサー軍は一万と少数ながら果敢に戦ったが、一進一退を続き戦いは膠着状態になっていったんだ。
これでは拉致があかない。消耗戦になると兵数の少ない我が軍には不利だ。
アーサー軍も北軍も兵数を半減させていました。ランチェスターの第1法則によると、アーサー軍の兵数の減りは約8千、北軍の兵数の減りは2万5千とアーサー軍は大健闘を見せたましたが、同時に限界も見えていました。
よし、敵に突っ込むぞ!
今から敵にですか?分かりました。わたくしも陣形を整えてど真ん中に突っ込みます!
一見、無謀の様に見えたアーサー王の突撃でしたが、ど真ん中を突き抜けたアーサー軍によって、北軍は一瞬真っ二つに軍が別れたんだよ。
それっ、今だ!
陰に潜んでいた一万の兵が、待ってましたとばかりに分断された片方に急襲をしかけました。更にアーサー軍も方向を変え同じ側を攻めました。疲労がたまった一万数千の北軍半分はひとたまりもなく壊滅しました。
やった!2万の我が軍で、6万の北軍に勝利したぞ!
さすがアーサー王!見事な采配に感服です。
後半戦の兵力は下記で
アーサー軍:5千
北軍:2万5千
アーサー軍の武器性能を3、北軍の武器性能を1と置いて戦闘力を計算しました。
戦闘力=武器性能×兵力
アーサー軍の戦闘力=3×5千=1万5千
北軍の戦闘力=1×2万5千=2万5千
と依然としてアーサー軍は不利な状況に立たされています。
そこでアーサー王は敵軍を2つに分ける手段を取りました。そうすると、北軍の片側の戦闘力は半分の1万2千5百となり、アーサー軍の戦闘力の1万5千が上回ります。
北軍の片側の軍に、力を温存し待機していた1万の兵が突っ込んでこれば、
待機軍の戦闘力=3×1万=3万
となり、有利に戦いができたのです。
このようにアーサー王の戦い方はランチェスターの法則でうまく説明ができるんだ。
解説、ごくろうであった。
実際のビジネスにランチェスターの法則を適用してみた。
たなかあきらです。実際のビジネスでアーサー王の用いた戦い方やランチェスターの法則はどのように適用できるのか?僕の実際のビジネスの実例を当てはめてみました。
僕の業務の1つは、自社の製品を台湾市場に販売することです。数年前にこの分野に後発で参入し、流通に台湾のG商社とパートナーにタッグを組んで拡販を狙おうとしていました。
電子部品や家電に使う素材が自社の製品で、お客様は部品メーカーでいわゆるB to Bのビジネス形態です。
それじゃあ、今回はランチェスターの第一法則を使用して
戦闘力=武器性能×兵数 を
販売力=営業力×シェア と置き換えて考えてみようか。
※シェアの変わりに営業数を考えましたが、営業数は競合他社を比べてもほぼ同じ状況でした。またシェアが多いほどお客さまからの問い合わせ数が増えたり、営業に力を入れなくとも売れるケースがあり、シェアを兵数と置きました。
実際の例:当初の状況
最初はどんな状況だったんだい?
はい、台湾市場に参入しているメーカーは3社あり、
A社(70%)、B社(25%)、自社(5%)です。(カッコ内は当時のシェア)
と自社のシェアはとても少なく販売力は弱く、何らかの手を打っていく必要がありました。
先ほどのアーサー王の戦いと同じく、君は弱者の状態だな。
奇襲の原則:奇襲で無力な敵を攻める
アーサー王は敵の情報収集をして夜営場所をキャッチし、武器性能がゼロ(寝ているとき)を狙って夜討ちをしたが、君はどうやったんだい?
台湾市場での競合相手の情報を徹底的に調べて、弱点を探しました。そうしたところ、競合相手には納期と支払い条件に問題があることが分かりました。よっしゃ、夜討ちだ!ということでG商社と奇襲をしました。
・競合相手の納期は45日程度。自分たちの納期は60日と負けてましたが、台湾で在庫を持つようにしてほぼ即納できるようにしました。
・競合相手の客先への支払い条件が厳しかったので、台湾商社に支払いの期日を伸ばして支払い条件を緩くしてもらいました。
競合相手の弱点を突いた奇襲攻撃により、ちらほらとスポットで注文が取れるようになってきました。
なかなかやるな。
武器の原則:見方の強みを引き出して武器にする
よし!この調子と、大手メーカー、中堅メーカー選ばず、どこか引っ掛かり注文をとれるだろうと全包囲作戦で営業活動をつづけました。
1年ほど営業活動をつづけましたが、注文が取れたり取れなかったりで安定した注文にはつながらず、シェアの伸び(販売力の伸び)にはつながっていませんでした。
さっきの、アーサー王と北軍の膠着状態ににてますね。
そうなんですよ。なので、アーサー王のエクスカリバーのような武器性能のとても高い決定力はないだろうか?と探したんです。
※商品の性能は価格は各社横一線で営業力のアップにはつながらない状況でした。
営業のエクスカリバー?なんだろう?
僕らはあることに気が付きました。G商社の担当者はRさんと言い、明るく人懐っこい性格で誰とでも簡単に友達になれる人柄でした。
台湾の人々は人間関係をとても重要視します。Rさんは、お客さんのところに頻繁に通って悩みを聞いたり一緒に食事をしたりして、良好な人間関係を構築に力を入れ始めました。
これは営業力のとても強い武器になりそうですね!
はい、Rさんの営業力は素晴らしかったです。その効果が徐々に表れてきました。話も聞いてもらえなかったお客さんにRさんは何度も通うことによって仲良くなり、この人から買いたいと思ってもらえるようになってきました。
Rさんとてもかわいがられる人みたいですね。そんな人に僕もなりたい。
集中の原則:広域ではなく局地的な戦いに絞る
さらに売り方も変えたのです。
アーサー王は一進一退の戦いが続いたときに、敵の兵力を真っ二つに分断して局地的な戦い方に変えて勝利に結びつけることができたな。
同じように、これまでは大手も中堅メーカーもターゲットを絞らずに手当たり次第に売ろうとしていました。そこで、ターゲットを中堅メーカーに絞り、営業力を局地的に集中させました。
売れそうな感じがしますね。
これがとても効果を発揮しました。競合相手は中堅メーカーにまで営業力をつぎ込めず、そこに営業力を集中させたので、注文が決まり初めてシェアを拡大して販売力を強化することができたのです。
やりましたね!!
A社(55%)、B社(25%)、自社(20%)とシェアを大きく伸ばすことができて、販売力が強まりました。
まずは中堅メーカーに絞って売り上げにつなげて、十分に実績を積みつつ大手への販売力を強化していく、という戦略がアーサー王の戦いにとても似ているな。
まとめ:たなかあきらコメント
ランチェスターの法則について要点をおさらいしておきます。
・ランチェスターの第一法則
戦闘力=武器性能 × 兵力数
・ランチェスターの第二法則
戦闘力=武器性能 × 兵力数の二乗
いずれの場合も、武器性能と兵力数が多いほど戦闘力が高くなり、勝つ可能性が高くなります。
ランチェスターの戦略では、特に弱者が強者に勝つための戦略を考えるところにキーポイントがあります。
・奇襲の原則(一騎討ち戦、局地戦、
・武器の原則(武器自体の性能を兵力比以上に高める)
・集中の原則(局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する)
ランチェスターの法則を用いたランチェスターの戦略は、現在のビジネスにとても活用できます。大手がいる市場で、弱者(中小企業や新規参入など)が勝ち残っていくためにはどうするのか?上記の3つの原則から考えていくとよいヒントが出るでしょう。
ビジネスも中世や近代の戦いも、勝つための原理原則は大いに共通点があるということが分かります。僕もますますこのランチェスターの法則を活用してビジネスを考えていきたいと思いますし、孫子の兵法とランチェスターの法則を組み合わせると、更にビジネスの手法が広がり有効であると思います。この点も書いていけたらと思います。
※筆者はこの人
最後まで読んでくださり有難うございました。
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