(18.7.10更新)
こんにちは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。皆さんはイギリスにあるウェールズをご存知でしょうか? またイギリスの国旗やウェールズの国旗はご存知でしょうか?
そうです、ウェールズの国旗は上の写真でとてもグロテスクなドラゴンが描かれています。こんな怪獣みたいのが国旗に??と思ってしまいますよね。
しかし、ウェールズの歴史を考えるとこのレッドドラゴンには深い意味があり、レッドドラゴンでなければならない理由もあるのです。
- ウェールズの国旗とイギリスの国旗(ユニオンジャック)
- ウェールズ国旗の概要
- ウェールズ国旗のレッドドラゴンの由来
- ウェールズ国旗の由来、レッドドラゴンを用いた王たち
- ブリタニア最後の王、英雄カドワラドル
- ウェールズ人最後のプリンス・オブ・ウェールズ
- その他、レッドドラゴンを軍旗に使ったイングランド王たち
- 最後に
ウェールズの国旗とイギリスの国旗(ユニオンジャック)
ウェールズはグレートブリテン島の西側に位置し面積は四国程度の小さな国で、イギリス(United Kingdom)の一部を成しています。
イギリスの国旗であるユニオンジャックを見てみましょう。赤の十字架であるイングランドの国旗と、ブルー地に白の✖であるスコットランドの国旗と赤の✖字のアイルランドの国旗が合体しています。
このユニオンジャックには、イングランド、スコットランド、北アイルランドは含まれていますが、ウェールズの国旗は含まれていません。なぜでしょうか?
この理由は、ウェールズは1536年に、ウェールズの直系であるヘンリー8世によってイングランドに統合されイングランドの一部にカウントされました。
他の国々の場合は、連合王国となっており、状況が異なります。これがウェールズ国旗はイギリスの国旗に入っていない理由となっています。(レッドドラゴンのようなグロテスクなウェールズ国旗を、他の国旗と組み合わせてイギリスの国旗に入れるのも難しいと思いますが。)
ウェールズ国旗の概要
ウェールズの国旗は、ウェールズの北部にあったグウィネズ国のカドワラドル王のレッドドラゴンと、イングランド王室であるテューダー朝の緑と白を組み合わせた形となっています。
この旗は1485年に起こった薔薇戦争の最後の戦いであるボースワース野の戦いで、勝利してイングランド王になったヘンリー7世が軍旗として使いました。その後、テューダー王室の紋章として用いられ、ヘンリー7世はウェールズの子孫であることを示しました。
そして、時を経て1959年にウェールズ国旗として公式として認可されたのです。
※ヘンリー7世に関する記事
ウェールズ国旗のレッドドラゴンの由来
このグロテスクなレッドドラゴンはどこからやって来たのでしょうか?
それは古代イギリスまで遡ります。古代イギリスはブリタニアと呼ばれ、1世紀から5世紀初めまでブリタニアはローマ帝国の支配下にありました。ブリタニアの各地にはローマ軍が駐在し、ブリタニアの支配及び外敵侵略を防いでいました。
当時のローマ軍はトビトカゲの軍旗を使用しており、ダキア人やパルマティア人からもたらされた、とされていました。2~4世紀のブリタニアでは、リブチェスターに駐在していたサルマチアン人たちが使用しており、このトビトカゲがウェールズのレッドドラゴンの由来と言われています。
このローマ支配下のブリタニアでは君主の多くが、このレッドドラゴンを軍旗に使用していました。
ウェールズ国旗の由来、レッドドラゴンを用いた王たち
ウェールズ王室の開祖、キネダ
キネダは5世紀の前半に活躍した人物で、現在のスコットランドのエジンバラ付近の国、マナウ・ゴドッディンの首長でした。その後、北ウェールズに移住し 、そこにウェールズの原形となる国であるグウィネズを建国しました。以後、キネダの血筋がウェールズ王室を引き継ぎ、様々な分岐はありますが現在のイギリス王室にまでたどり着いています。
このキネダは敵を徹底的に打ちのめすほどの猛者として恐れられていました。そのキネダも紋章にレッドドラゴンを用いていたようです。
キネダが馬に乗るときは900人の従者が馬と共に彼に従い、キネダが戦争に行くときには赤い黄金のドラゴンが彼の上に掲げられた。
※キネダに関する記事
ウェールズの英雄、アーサー王
アーサー王や、アーサー王の父ペンドラゴンも軍旗にレッドドラゴンを使用したと言われています。ペンドラゴンはpen-dragonと分解され、ペンは頭という意味なので、頭にレッド・ドラゴンをかぶっていたのではと想像できます。
魔法使いマーリンの伝説
5世紀中頃のブリタニアはローマ軍が撤退し、ウェールズ付近を中心に勢力を持っていたヴォルティゲルンがブリタニアを統治していました。ヴォルティゲルンは外敵と戦うためにユカタン半島にいたジュート人やアングル人を傭兵として雇い入れました。これが、アングロサクソン人のブリタニア侵略に繋がったと言われています。
このヴォルティゲルンが要塞を建築しようとしていたところ、夜になるとすぐに破壊されてしまうという現象が起きていました。魔法使いのマーリン少年に命じて調べさてたところ地下で赤い竜と白い竜が戦っていることを見つけました。
この赤い竜がレッドドラゴンでブリタニア(ウェールズ)を差し、白い竜はアングロサクソン人を指しており、力に勝っている白い竜が後のアングロサクソンのブリタニア征服を暗示している、と9世紀にネンニウスによって書かれた歴史書ブリトン人の歴史(Historia Brittonum)に書かれています。
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ブリタニア最後の王、英雄カドワラドル
※カドワラドルに起源をもつと言われているウェルシュ・レッドドラゴン
ウェールズの最強国グウィネズの王(655~682年の在位)であり、最後のブリタニア王であるカドワラドルも軍旗にレッドドラゴンを使用したという伝説があります。
その話をもとに、先に書いたイングランド王のヘンリー7世がレッドドラゴンを自身の軍旗に用いました。
7世紀に黒死病と言われる伝染病がはやり、また簒奪者によってウェールズ王位が奪われたときに、救世主の如く現れてウェールズを救ったのがカドワラドルです。ウェールズではアーサー王やオウァイン・グリンドゥールと共に英雄の1人として語り継がれています。
※カドワラドルに関する記事
ウェールズ人最後のプリンス・オブ・ウェールズ
1283年にイングランドに敗北してからウェールズはイングランドの支配下にありました。1400年にイングランドの圧政に苦しむウェールズの人々の為に、ウェールズの独立を勝ち取ろうと反乱を起こした人物がいました。ウェールズ人としては最後のプリンス・オブ・ウェールズとなった、オウァイン・グリンドゥールです。
オウァインも軍旗にウェールズ人の魂が刻まれたレッドドラゴンを使用して、イングランドに抗戦し次々にウェールズの領土を奪い返していきました。しかしもう一歩というところで鎮圧されてしまいました。オウァインのウェールズを思う心は今も人々に語り継がれています。
※オウァインに関する記事
その他、レッドドラゴンを軍旗に使ったイングランド王たち
その他に、イングランド王たちもレッドドラゴンを軍旗として使用することも多々ありました。
・獅子心王のリチャード1世は、1191年の三度目の十字軍遠征の時にレッドドラゴンを使用しました
・ヘンリー5世は、フランスとイングランドの百年戦争の中で有名な、1415年に起こったアジャンクールの戦いのときに、レッドドラゴンの軍旗を用いました
・またヘンリー3世やエドワード3世も同じくレッドドラゴンを軍旗に使いました
最後に
ウェールズ国旗のレッドドラゴンは、現在はウェールズのお土産としても有名となっています。もしウェールズに行く機会がありましたら、レッドドラゴンの背景を思いながら是非レッドドラゴンのお土産を手にしてみて下さい。
僕も、ネクタイ、ネクタイピン、キーホルダー、消しゴムなどを購入し、日本にいる今もレッドドラゴンに囲まれて生活をしています。
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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