漫画「ヴィンランド・サガ」の第8巻の一場面で、ヴァイキングのスヴェン王はウェールズに対し大きな不快感を表しました。
その真相はどうだったのか?お話しいたします。
スヴェン王のウェールズに対する怒り
ヴィンランド・サガの中で、スヴェン王はこのようにウェールズに対して不快感を示しています。
この地には未だ王に対する畏れを知らぬ
無礼な者どもがおるということも
余の遣わした臣従を勧める使者を二度にわたりはねつけおった
当時のウェールズ小国群の構成
デンマークのスヴェン王がイングランドに侵略をし始めた1002年から、イングランド王にもなった1013~1014年あたりの、ウェールズ小国群はどんな状況であったのか、簡単に説明します。
ヴィンランド・サガでの表記とは若干ことなりますが、当時のウェールズは主にグウィネズ(Gwynedd、その一部がロースやルボニオグ)、デハイバース(Deheubarth、その一部がデヴィッド)、ポウィス、南部のモルガンウィグなどに分かれていました。
グウィネズが最強国であり、デハイバースやポウィスに影響力を及ぼし、南部は独自に王国を作っていました。
最強国のグウィネズは王室内での権力争いによる内乱が続き、政権が不安定でした。そんな王室に見切りをつけた人々は、エダンと呼ばれる身元不明の男を受け入れ、エダンは十数年にわたって統治者として君臨していました。
※エダン・アプ・ブレギウィリド:Addan ap Blegywryd
1005年、下剋上的にグウィネズの統治者となる。しかし、評判が悪く1018年に戦いに敗れ戦死。
ウェールズを攻めなかったスヴェン王
そんな不安定なウェールズだったら、ヴァイキングも簡単にウェールズを侵略出来たんじゃないですか?
そうなんだよね。ヴィンランド・サガの場面にもあるように、スヴェン王はウェールズを配下にしようと使者は送ったかもしれないけど、イングランドと戦い征服したような明らかな戦争はウェールズに対しては行っていないんだよ。
これを見てくれ!
※赤と黄色がヴァイキングに占領された場所
出典:Forn Sed
イギリスにおいてヴァイキングは多くの場所を占領したけれど、西側のウェールズは長年に及んでも占領できていないんだ。海岸沿いに幾つかの小さな集落を作った程度にとどまったんだ。
ウェールズはヴァイキングにとって魅力的でなかったんですか?
理由はいくつか考えられ、山岳地帯が多く攻めにくい、土地が肥沃ではなく人々も貧しい、過去に何度も攻めたが大敗した、などが挙げられます。
ヴィンランド・サガの場面で、アシェラッドもこう説明してますしね。
山谷の多きことで、知られる土地です。攻めれば地の利を敵に奪われましょう。
困難が予想されます。
そのような貧しき地から大兵をねぎらうに足るだけの収穫が得られるとは思われませぬ
このため、イングランドを征服したスヴェン王はその権力でウェールズを威圧し、戦わずして臣従させようと考えたのではと思います。
なるほど~
※ウェールズへの戦いの目的は、ヴィンランド・サガの場面ではアイルランド討伐の準備の間の兵を休ませぬため、とも書かれています
スヴェン王の名がついたウェールズの地名
とは言え、スヴェン王の部隊はウェールズにも訪れていました。ウェールズ南部にあるスウォンジー湾で嵐の為にスヴェン王艦隊は壊滅したと言われています。それに因んでつけられた地名がスウォンジーとの説です。
Sweyns-ey・・・Sweyn’s island : スヴェンの島
⇒Swansea スウォンジー
スウォンジーの名をみると「スワンの海」と美しい海を想像したのですが、ヴァイキングが語源だったとは驚きです。
今も海は美しく観光地としても素晴らしい所ですよ。
スウォンジーを詳しく知りたい方はこちら
最後に
ヴィンランド・サガは、歴史・ストーリー・観光まで楽しめ、とても興味深いですね。ウェールズはヴァイキングに占領されたことはないものの、ヴァイキングの痕跡は多く残っています。漫画を読みストーリーに興味を持ち歴史を知り、さらに現地まで行けると、 とても楽しいなあと思います。
最後まで読んでくださり有難うございました。
コメント
ヴィンランド・サガ、面白いですね。
ウェールズは、攻めにくい所だったのですね。
山岳地帯が敵を防いだんですね。^^
id:nezuzyouziさん
いつもコメントありがとうございます。本当にヴィンランド・サガは面白いですね!
そうなんです、ウェールズは山岳地帯が多く、ウェールズ軍はそれを利用して上手くっ隠れて、奇襲・急襲が得意だったんですね。