長いものには巻かれろ!
古代のイギリスは、まだイギリスともイングランドとも呼ばれておらず、英語を話すいわゆるイギリス人はまだ影も形もない時代であった。当時はブリトン人とよばれるケルト系民族が住んでいた。ブリトン人はウェールズ人や一部のスコットランド人の祖先にあたる民族でした。
イングランド北部にコエル・ヘンと呼ばれる男がいた。日本語で訳すと、コエル爺さん。当時のイギリスは長い間ローマ帝国に占領されており、ローマ軍指示のもと外敵のピクト人やスコット人の侵入を防ぐ任務に明け暮れていました。
<ちょっと劇のような感じで語ります>
◆ブリトン人、コエル・ヘン役
◆部下役
◆ローマ高官、マグヌス役
敵だ!敵が来た!!
なにっ、我らの司令官がローマ軍を捨て攻めて来ただと!
司令官がピクト人やスコット人と同盟を結んで、ローマ軍をつぶしにかかっています
ううむ
チャンスじゃないですか?我らも司令官に従ってローマ軍をつぶしましょう!
コエルは悩んだ。ここでローマ軍を敵に回しイギリスを取り戻すために戦うべきか?
ローマ軍と共に司令官の反乱を抑え、再びローマ軍の支配下に甘んずるか・・・
少し様子を見よう・・・・
反乱軍を鎮めようとローマから新たな司令官が派遣された。しかし・・・
やられた!やられたぞ!
ローマから派遣された新たな司令官が派遣されましたが、反乱軍には歯が立ちません!コエル様、早く反乱軍に加わりましょう!!
コエルは考えた。同志よ・・・気持ちは分かるが。今のわれわれブリタニアには実力がなさすぎる、弱すぎるんだ。長い間のローマ軍支配に、逆に甘えてしまい自ら鍛えることを怠ってしまった・・・自分の足で立てるように強くならねば・・・今はダメだ・・
いやっ、我々はローマ軍に加担するぞ!
なんですって!
ローマ軍は面目を潰され本気になるはず、今度は必ず大軍を送って来るぞ! それに、たとえローマ軍を追い払ったところで、ピクトとスコットは再び我々を攻めてくるはずだ。そうすると、今度はローマ軍の助けがないので、これまで以上に苦しむことになるぞ!
兵を纏めて、ローマ軍を助けるぞ!出発だ!
ローマ帝国は司令官を首にし、今度はテオドシウス・エルダーとマグヌス・マキムスというローマ軍No.1、2の高官を送りこんできた。
さすがにこの二人に掛かっては反乱軍は手も足も出ず、鎮圧されてしまった。
マグヌス閣下が来られた!!
コエル君、ご苦労であった。
はっ、マグヌス閣下。
これから私が司令官だ。君の功績を称えて辺境警備のリーダーとする。これまで以上に私に仕えてくれ。
有難きお言葉。心してこのブリタニアを守ります。
任せたぞ!
コエルは考えた。やはり同志の為にも、ローマ帝国から独立して自分達の国は自分達で治める夢は叶えたい。
しかし、急いで夢をかなえようとしても失敗する。焦らず今はローマ帝国に従い任務をしっかり遂行してじっくりと実力を蓄え、来るべきチャンスを捕らえるようにしよう。
ここはぐっと我慢だ。
ノーザンブリテンのコエルの他に、周囲にはやマナウ・ゴドッディンにはパダン、ストラスクライドにはケレティックという騎士がいました。彼らも同じくローマ帝国に従い、辺境警備の任務にもくもくと従事しながら着実に実力を伸ばしていた。
大器晩成の偉人
時は経てローマ帝国は内乱により東と西に分裂し、徐々に強大な権力にも陰りが出てきた。
ローマは危機に瀕している。多くのローマ軍は本土の戦いのために帰ることになった。これからは、お前たちに自治権を与えるかわりに、辺境警備にもさらに力を入れてくれ!
ははっ、マグヌス閣下!
コエルは思った。夢にだんだん近づいてきたぞ。しかし、まだ時期は早い、ローマがもっと弱るまでの辛抱だ。
コエルはノーザンブリテン国を治め、同じくパダンやケレティックも自国を治めるようになった。
彼らはお互い牽制はしあうもの領土拡大のための侵略戦争はせず、引き続きローマに従いピクト族の侵略を許すことなく辺境警備に従事しながら着実に自国を強くしてことに力を注いだ。
コエル様!!ローマ帝国から使者がきました!
使者:コエル殿、ホノリウス帝からの令をお伝えする
使者:ローマ軍はイギリスから撤退することに決まった。これから私の指揮の下、全軍ローマへ帰還する。そして、君をその後の司令官に任命する。
ここの私がですか?有難うございます。
使者:引き続き、ホノリウス帝とローマ帝国に忠誠を誓うように!
有難き幸せ!
目先の成功より将来の成功
ローマ帝国は弱体化を続ける中バンダル人などから侵略を受け、ついにイギリスに軍隊を駐在させる余裕がなくなり410年には撤退してしまった。
これまではブリタニアを治める総司令官もローマから派遣されていましたがそれも出来なくなり、コエルは実績、信用、実力が認められ念願の総司令官に任命された。
ローマ帝国の影響は残るものの、ついにブリタニアを自分たちの手で治めることができるようになった。
ローマという強大な力に逆らわず与えられた任務に励み、慌てずあせらず実力を蓄えたことが長い目で見ると成功につながった。
その後も、ノーザンブリテン、ストラスクライド、マナウゴドッディンは、目先の領土拡大にとらわれずお互い侵略戦争でつぶし合うことは避け、自国を長期にわたり繁栄される国造りに励んだと思われる。
特にストラスクライドは、ピクト族やスコット族の侵略だけでなく、その後アングロサクソン族やバイキングの侵略があったにもかかわらず、スコットランドが建国されるまで400年以上も国の形を大きく変える事もなく存続し続けたことには目を見張るものがある。
最後まで読んでくださり有難うございました。
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おしまい。
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