時代は9世紀の初め頃、ウェールズ北部のことであった。大量の牛が疫病にかかり、王の宮殿は落雷にあい消失してしまった。まるで国の荒廃を暗示するかのような不吉な事件が続いていた。
その不吉な予感が当たったかのようにウェールズでは王室の後継争いによる内乱が続き、さらに東側からはアングロサクソン人の強国マーシアが勢力を広げ武力による侵略を受けていた。 ウェールズに住む多くの人々は行く末の希望を失い、不安な日々を過ごしていたのであった。
この先、我々の国ウェールズはどうなっていくのだろうか・・・・私達は生きていけるのだろうか・・・
救世主は現れるのだろうか?
ウェールズに救世主現る!!
荒廃した中世ウェールズの時代に、救世主のごとく現れウェールズを建て直した王がいました。
そのウェールズ王は、それまでのウェールズ王室に新たな血筋を持ち込み、子孫はウェールズ王室だけでなくイングランド王室に繋がっている創始者的な役割を果たしたのです。その知られざるウェールズ王についての物語です。
イギリスのマン島からやってきたそばかす王!!
「メルヴァンよ、お前の母の祖国であり我々の同士であるウェールズが大変な状況だ。援軍を率いて加勢してくれ!」
「はい、父上!親戚を助け、母上も安心させます!」
そばかす顔のメルヴァン・ヴリッヒ青年は、イギリスの北部に位置するアンイス・マナウ(現在のイギリスのマン島)に住んでいました。父親はその小さなマン島を治めるグワリアド、母親はウェールズから嫁いだエシルトでした。メルヴァンは親類たちの住むウェールズを助けに旅に出ちました。
メルヴァンはウェールズの小国ポウィスのカンゲン王と共に、強敵マーシアに立ち向かいました。
「この男できる。是非永く味方に取り入れたい。そうだ我が妹をこの男に嫁がせ、将来のポウィスを任せよう!」
メルヴァンの母の故郷グウィネズはウェールズ最強の国でした。しかし、母の父兄弟の権力争いによる戦いでと強敵マーシアの攻撃で荒れ果てていました。
「誰か相応しい後継者はいないか?もうウェールズ王室の血筋では国が滅亡してしまう・・・ポウィスを救ったメルヴァンはどうだろう?それは良い考えだ!後継者はウェールズの王室直系がしきたりだが、血が繋がっていたら良いだろう!」
ウェールズでは息子に国を後継することがルールでしたが、メルヴァンは異例にもグウィネズとポウィスの領土を後継しました。メルヴァンが王になるとマーシアもウェールズに攻めて来なくなり、ウェールズの救世主、ウェールズの最強王になりました。このメルヴァンの血筋は大繁栄し、ウェールズ王室として多くの偉大な王を生みました。
※ヒップホップ界のエミネムの先祖として記事を書いた、ウェールズの偉大な王ロドリ大王の父がメルヴァン
このウェールズ王が残した大きな偉業!!
メルヴァンは遠方からやってきたウェールズの救世主だけでは終わりませんでした。
「ウェールズの歴史、いやワシの故郷マナウを含めたブリトン人の歴史と文化を後世に残さねば!」
メルヴァンはネンニウスに命じて歴史書Historia Britonum(ブリトン人の歴史)を書かせたのではと考えられています。この歴史書にはイギリスの英雄アーサー王に関する具体的な内容の記述がみられる最古の資料なのです。つまりメルヴァンがアーサー王物語の生みの親かも知れません。
今回のまとめ:救世主となったウェールズ王の偉業
メルヴァンに関する事は殆ど知られていません。しかし、ご紹介しましたように、ウェールズの歴史だけでなくイギリスの歴史に大きな影響を残した人物に違いはありません。少しでもメルヴァンの話を楽しんで頂けたのなら幸いです。
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最後まで読んで下さりありがとうございました。
コメント
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