円卓の騎士の1人アグラヴェイン卿(Sir Agravain)はアーサー王の甥にあたり、オークニーのロット王とモルゴースの息子です。
兄弟には、同じ円卓の騎士、ガウェイン卿、ガヘリス卿、ガレス卿、さらにモルゴースと異父弟にモルドレッド卿がいます。
アーサー王物語に描かれているアグラヴァイン卿とはどのような人物なのでしょうか?
現在のアグラヴァイン卿の人物像、アーサー王物語が完成する以前のアグラヴァイン卿の人物像、アグラヴァイン卿がなぜ悪者になったのかを分かりやすく纏めました。
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悪者アグラヴァイン卿
アーサー王とキャメロットの崩壊について「その全てはアグラヴェインとモルドレッドが原因である」と言われるほどの悪役になっています。
・映画「エクスカリバー」の中でも、アグラヴェインはアーサー王やグィネヴィア王妃に悪意のある態度を示し、アーサー王を激高させる場面も描かれています。
・ランスロット卿をねたむモルドレッドとアグラヴェインは、常にランスロットを陥れようと、グイネヴィアとランスロットの不倫を暴こうと、悪意を抱き続けます。
・王妃グィネヴィアとランスロットの不倫の現場をおさえて、ランスロットの反撃に会いアグラヴァインは殺されました。
ランスロットのアーサー王への「不誠実を見つけて現場をおさえた人物」として称賛されることは全くなく、むしろ逆で、
アーサー王とキャメロットの崩壊について「その全てはアグラヴェインとモルドレッドが原因である」と言われるほどの悪役になっています。
過去は尊敬されたアグラヴェイン卿
アグラヴェインは当初、さほど悪い騎士として描かれていませんでした。
・パーシヴァルが描かれている12世紀の「聖杯の物語:Perceval, the Story of Holy Grai」で「硬い手」と書かれています。
・13世紀のランスロ=聖杯サイクル(Lancelot-Grail)においては、ガウェイン卿やガレス卿よりも背が高く、ハンサムで才能あるヒーロー的な行動が描かれています。
・14世紀後半に書かれたとされる、ガウェインの「ガウェインと緑の騎士:Sir Gawain and the Green knight」では、アグラヴェイン卿は「堅い手のアグラヴェイン」(Agravain of the Hard Hand)と呼ばれ、立派な騎士と書かれています。
また、アグラヴァインは兄弟と共にサクソン兵と戦い、囚われていた人々を解放しました。アグラヴァインはこの手柄の報酬として、騎士に叙せられ、円卓の騎士の一員になりました。
つまり、アグラヴェイン卿は悪役というよりも、尊敬できるとてもハンサムで剣と斧の使い手でした。
しかし、アグラヴェイン卿は悪者へと描かれ方が変わっていきました。
アグラヴェインの悪者への変貌
現在の悪者アグラヴェインの人物像は、
・傲慢(ごうまん)で横柄(おうへい)、最も気難しく付き合いにくい嫌な奴
・妬み深く、思いやりが無く、不愉快で、人に悪意を持った人物
として描かれています。
確かに、13世紀のランスロ=聖杯サイクル(Lancelot-Grail)においても、洗練された騎士と書かれるだけでなく、アグラヴェインの傲慢な性格を描いた部分はあります。
・傲慢で毒のある言葉をはく
・すべての人への嫉妬が深い
・情けや愛がない
12世紀初めに書かれた、アーサー王物語の原形と言われる「ブリタニア列王史」では、ランスロットは登場せず、アグラヴェインも登場していません。
※モルドレッドはアーサー王に反逆を起こす役で登場
15世紀に描かれたアーサー王物語の完成版「アーサー王の死」では、他の物語で描かれていたランスロットやアグラヴェインなどが取り入れられた、と考えらます。
・アーサー王とランスロットの溝(グウィネヴィア王妃とランスロットの不倫)
・アーサー王側とランスロット側に分裂する円卓の騎士
・分裂をより加速させ、ランスロットを陥れようとする、アグラヴェインとモルドレッド
アーサー王物語をより面白くするために、
多くの人が追加されて人間関係が複雑となり、キャラクターを個性的に面白くするために、アグラヴェインやモルドレッドは悪役として描かれたのではないか、と考えられます。
特にアグラヴェインの場合は、当初に描かれていた嫉妬深く傲慢な性格のみが、クローズアップされた形になったものと思われます。
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コメント
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