こんばんは。ウェールズ歴史研究家を名乗る、たなかあきらです。
今回から、前回から歴史ストーリーの新連載を始めました。舞台は5世紀前半にかけての、ウェールズ付近の伝説をもとにした創作ストーリーです。
脱出
「アンブロシウス、ウーサー! 早くいらっしゃい! 荷物を持って出かけるわよ!」「はい母上、今日はどこへお出かけするの?」
「しーっ、黙って! 静かにして、急いでいくわよ」
「かくれんぼするの? 僕あっちに隠れるね」
「そっちはだめ!こっちよ、黙って急いで!」
「おい、王妃、いやもう王妃ではない。母親と子供たちはどこだ!」
「ヴォーティガン様。それが、、、誰もいないようです」
「くそっ、一歩遅かったか。感づいて逃げやがったな。まだ遠くには行っていないはずだ。辺りを探してひっ捕らえろ!」
「ははっ」
ヴォーティガンに命令された兵士たちが、ティンタジェル城から街中へ続く道に、怪しい動きはないか、目を皿のようにして360度見下ろした。
「お、あそこに見えるぞ、いたぞ! 追え、追うんだ!」
「ふふふふふ、イタイタ。ご家族そろって、どこへお出かけかな。おおお、あんなところにいらっしゃる。さあ、逃げろ逃げろ。でも逃げても無駄だ。すぐに捕まえてやるぞ。ふふはははは」
王妃と王子は、城壁を越え細い裏道を通り、必死に先を急いだ。しかし、目の前には大きな壁にぶち当たってしまった。
「あっ、行き止まりだわ」
一瞬、来た道を戻ろうとした。しかし、兵士の声がこだました。
「あそこにいたぞ!」
「いたぞ!」
(※δɤ※Θ・▽η××ΔΔδ・ɤɤ§)
もう駄目! と振り返ったところ、行き止まりの壁だったところに一筋の光が見えていた。
「こっちに道があるわ。さ、急ぎましょ」
(㍵&・ΘΘ∂⊿・※δɤ※Θ)
王妃たちがその道を通り過ぎた直後、どこからともなく、もやもやもやっと煙が立ち込めて元々あった壁が現れてきた。
その時、ちょうどヴォーティガンと兵たちがやってきた。
「おやっ、確かにこの辺りにいたと思ったけど・・・ヴォーティガン様、奴らが全く見えなくなってしまいました」
「くそっ、巻かれたか。こざかしい奴らめ。お前たち、しらみつぶしに探せ! どこかに隠れているのかもしれぬ。徹底的に探せよ!」
「ああ、何とか悪い奴らから逃れることが出来たわ」
「僕たち、悪い奴らに追われていたの? 怖いよ~」
「もう少しよ、もう少し頑張りましょう」
ティンタジェル城の城壁を越え、町の中を通り抜け、三人の行く先には海が見えてきた。海岸に近づいていくと、そこには一艘の小さな船が岸にとまっていた。
「あの船に乗るわよ!」
「あっ!」
「ふふふっ、甘いな。どうせ、ここに来ると思ったわい。ここから船で脱出するつもりだっただろう。そんなことは、お見通しだ。そう簡単には逃げきれんぞ!ここまでだな!大人しく観念しろ!」
「ああ、神様。どうぞ私たちをお助けください。私たちが何か悪い事でもやったのでしょうか。どうぞヴォーティガンから遠く離れた所に、逃がしてください」
「お前たち、三人を捕らえろ!」
「はい!」
ヴォーティガンの部下たちが王妃達を捕らえようと近づいてたその時、急にまぶしい閃光がヴォーティガンたちの方向に差し込んできた。
「あっ、何だなんだ! まぶしくて何も見えぬ」
ヴォルティゲルン達の目をくらませました。彼らが暫く視力を失っている間に、新たな船が急に海岸に現れロワナ達の方に近づいてました。
「さっ、急いで乗るのよ」
「はい」
「いっ、いつの間に待て〜っ」
目の眩みから回復し、ヴォーティガンたちは三人を追いかけた。
「くそ、間に合わぬ、矢を射て、串刺しにしてしまえ」
船に向かってヴォーティガンたちは矢を構えた。
「よし、打て!」
雨の様な矢が飛んだと思った瞬間、突如として渦巻くような強風が吹き上がった。
「今度は何だ、なんだ! くそ、矢が届かぬではないか」
「いてててて、砂で目に入った、、、いてててて、前が見えぬ~」
ヴォーティガン達が砂煙りに巻き込まれている間に、三人が乗り込んだ船は沖に向かって動き出していった。
ヴォーティガンは地団駄を踏んで悔しがった。
「くそっ~頭にくる、何でこんな風が突然、、、見てろ! きっと捕らえてコンスタンスのもとへ送り込んでやるわ!」
「※δɤ※Θ・℄※‱〷・δ。ふふふ、危ないところでしたね。どうぞお気をつけて」
次回へつづく
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