こんばんは。ウェールズの歴史を研究しているたなかあきらです。
ウェールズの9世紀~
前回はウェールズ版の三本の矢は上手く働いたのか?という話をしました。今回はギクシャクしていた三本の矢が、強国とリベンジの戦いをする場面です。
前回第2話:絡み合わない結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第2話~
<語り手>
ウェールズの歴史にやたらと詳しいワタル。歴史になると話が止まらなくなる。
歴史に詳しくないアサオ。心は優しいが、かなり小心者。
語り手のジェイムス。親切で気の良いお兄さん。
これまでのあらすじ
※分割していたウェールズ。緑の部分は後にイングランドとなるウェセックスやマーシア。
中世のウェールズは、主にグウィネズ(Gwynedd)、
9世紀にロドリ大王が登場し、ウェールズ三国の統一し外敵も撃破してウェールズに束の間の平和をもたらしました。ロドリは3人の息子たちに国を分けてウェールズの結束を深めようとしましたが上手く機能しない矢先、ロドリはヴァイキングとマーシアに攻撃を受け、命を落としました。
<登場人物>
長男:野心家でせっかちなアナラウド
次男:手堅くしたたかなカデル
三男:平和主義で弱気なメルヴァン
強国の襲来
小さな川の流れは弱い。しかし弱い力であってもせき止められ一気に流れ込むと、短時間に起こる局地的豪雨の様に氾濫を起こし、大きな脅威に豹変することもある。
ウェールズは雨が多く、一日のうちに6度も天気が変わると言われているように、突然雨が降ってくることは日常茶飯事である。
881年、北ウェールズのグウィネズに於いて。アナラウド、カデル、メルヴァンのウェールズ連合軍は、エセルレッド率いるマーシア軍との戦いに向かっていた。
なかなか雨が止まないな。うっとうしい限りだぜ。
この雨じゃ敵もどこかで陣営を張って休むだろう。我々も斥候を出して敵の情報を探り、待機することにしよう。
どうやらマーシア軍は、コンウィー川の畔にいるようです。そこでキャンプを張ると見受けられます。
よし、チャンスだ!すぐに攻撃を仕掛けてぶっ潰そう!
待てよ兄貴。今仕掛けても効果は薄い。夜になって敵が油断したところを、裏山から急襲を仕掛けるのが良いだろう。
うぬぬぬ、じれったい奴だ。雨が降っている今急襲した方が、敵の目を逃れるチャンスじゃないか?
僕も今は待った方が良いと思います。
どいつもこいつも俺に意見しやがる。くそ、分かったよ。夜を待とう。
夜になり、コンウィー川の湖畔にキャンプを張ったマーシア軍めがけて、背後の丘陵から一気に突っ込む作戦を取った。
わが軍は少ないが敵は大軍だ。我が軍を大勢に見せかけるため、3方に分かれて敵を挟み撃ちにするぞ。川も増水している、我が軍の急襲を受けたら逃げ場はない、敵は大いに混乱するだろう。そこが狙いだ。敵は油断している。日が沈んだら、敵に向かって一気に丘から攻め降りるぞ!
よし、行くぞ!!
うぉー、
We win!! 親父の仇をとったぞ!
やりましたね! とうとう、三人が協力することが出来ましたね!
父親の仇を討つという大義があったので、辛うじてではあるが力を合わせることが出来たな。
そうですね。勝つには勝ったけど、先行きは不安だなあ・・・・・・・
またヴァイキングが攻めてきたり、マーシアが雪辱をかけて攻め込んできたり、ありそうだなあ。
その不安があたるかどうか、3人の結束は続けることが出来るのか?
つづきはまた、次回!
※このストーリーは歴史上の実在人物や出来事が登場しますが、たなかあきらが書いたフィクションです。
最後に:たなかあきらコメント
881年に起きた、エセルレッド率いるマーシア軍とウェールズ連合軍は、ウェールズ北部にあるConwy(コンウィー)で激突しました。これをコンウィーの戦いと呼んでいます。
ウェールズの戦い方は、陣形を作って組織的に真っ向から戦う、というよりも、敵の隙をついた夜討ち、夜襲が得意でした。地形や天候をうまく利用し敵を混乱させて、小軍で大軍を倒したことも少なからずありました。
強国マーシアを打ち負かしロドリ大王の仇を取った今回の勝利は「ロドリ大王への神による勝利(Revenge by God for Phodri)」と呼ばれました。また兄弟達は「ブリタニア3王」と呼ばれるようになり、イギリスの中でも一目置かれる統治者となりました。
しかし、この勝利が結束を深めることになったか、と言えば別問題で、新たな問題が生じてくるのでした。
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※これら記事の著作権はたなかあきらに属します。
最後まで読んでくださり有難うございました。
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