こんばんは。ウェールズの歴史研究家たなかあきらです。
ウェールズの9世紀~
今回からは新展開が始まります。兄弟で争い合ったウェールズの内乱。暴君化したウェールズ王の息子と、敗れた兄弟の息子が、これからにらみ合っていくストーリーです。
前回までの記事:新展開がスタートします。
それでは、お楽しみください。
これまでのあらすじ
※分割していたウェールズ。緑の部分は後にイングランドとなるウェセックスやマーシア。
中世のウェールズは、主にグウィネズ(Gwynedd)、
9世紀にロドリ大王がウェールズを統一して束の間の平和をもたらしましたが、マーシアに攻められ命を落としました。
再びマーシアが攻めてきた時に、関係がぎくしゃくしていたロドリの3人の息子たちは初めて協力し合い、マーシアを打ち破ります。しかし、その後は再び対立し、長男のアナラウドが乱世を制し、暴君化していきました。
敗れた次男カデルは息子ハウェルに将来の望みを託します。
<登場人物>
暴君化したアナラウド
アナラウドの息子イドワル。冷静で冷淡、冷血。
ハウェルの弟クラドグ。ちょっとお調子者。
復活のスタートは意外な展開から
父の国、僕の国が燃えていく・・・・・・
ああ、こんなに荒れ果ててしまった・・・・・・
暴君と化したアナラウドと強国マーシアの攻撃にあってハウェルの住むデハイバースは焼け野原のように荒廃した。
僕が、父カデルをついでこの国を立て直していかなければ・・・・・・
そして、10年後・・・・・・
北ウェールズ、ルズラン城にて
イドワルよ。ワシはもう年だ、余命も幾ばくも無い。隠居して、この後はお前にグウィネズを任せることにした。我が愚弟カデルには息子ハウェルがいる。いつ反抗してくるかわからんぞ。奴らにはくれぐれも気を付けてくれ。
奴らにそんな勝手な真似はさせませんよ。ご安心ください、父上。私がグウィネズをさらに強くしてウェールズを統一させましょう。
よく言ったイドワルよ。わしは安心してお前に任せられる。
ーーーーーー
フン、暴君の親父もよく言ったもんだ。
オレはウェールズ統一よりも我が領土グウィネズにしか興味がない。
増してやカデルの息子ハウェルなどにも興味はない。
厄介な奴なら、税を引き上げ略奪をして、反抗できない様に叩いておけばよい。
それより、強国のイングランドとどうやって付き合っていくかが重要だ。
そのころ、ウェールズの周りの国々では状況が大きく変わってた。
アゼルスタン王率いるウェセックスがヴァイキングを打ち破りデーンローを奪回し、スコットランドとウェールズを除く領土を統一。927年にイングランドを建国して絶対的な勢力を誇っていた。
周辺国家で、アゼルスタンに歯向かうことは、すなわち破滅を意味していた。もちろん、アゼルスタンはウェールズにも傘下に入れと圧力をかけていたのである。
あ~あ、オレの国は弱いなあ~
みてみろ、イングランド、グウィネズ、強国ぞろいだ。それに引き換え、オレの国はこんな狭くなっちゃった。ケレディギオンだけだぞ。
それに働いても働いてもイドワルに税で巻き上げられるだけだしな。
兄貴どうします?
いっちょ、旗を上げるか?
イドワルと戦ってやっつけるんすか?
バカヤロー、そんな力が俺たちのどこにあるんだ。南だよ、南。ダヴィドとアストラッドを略奪して稼ぐんだよ。
すげー、さすが兄貴。頭いいっすね。
アナラウドに攻められて以降、デハイバースはケレディギオンとダヴィッド、アストラッド・タウィに分かれていた。クラドグとハウェル兄弟の治める領土は、狭いケレディギオンのみに減っていたのである。
どうだ、まずダヴィッドを攻めようぜ
いいっすね兄貴。やりましょう!
そういえば兄貴、ダヴィッドの王リワルヒの娘って知ってますか?
おお、確かエレンといったな。たいそう美しいとの噂じゃないか。
兄貴どうっす?
どうって・・・・・・そうか、そうか、それもいいなあ。お前は悪知恵はよく働くなあ。
えへへ、どうも、ごっちゃんです~
ハウェルとクラドグはダヴィッドに侵入し、自分が昔アナラウドから受けた
略奪や放火の行為を繰り返した。
やったぜ、今日も大漁大漁。こりゃ、やめられんな、略奪は。ヴァイキングの気持ちも良くわかるわ。でも奪うところもかなり減ってきたなあ、そろそろ潮時かも知れん。とどめを刺しておくか。
おい、クラドグ。お前、ダヴィッドのリワルヒ王のところに使者に行ってこい。
たっぷりと脅してふんだくってくるんだぞ。例の娘の話もな。
へい、承知しやした。へへへ、面白くなるなあ。
クラドグは馬を飛ばして、リワルヒ王にいるダヴィッド国へ急いだ。
あれ、なんか変ですね。
独裁王の息子イドワルの方が意外と真面目で、まともだったカデルの息子ハウェルが暴れん坊になってますよ。
こんなハウェルでこの先大丈夫なんですか? 不安だなあ。
言ってしまうとネタバレになるからな。おれ、今は何も言わないよ。
ふふふ、またひと暴れするか!
最後に、たなかあきらコメント
前回までのストーリーは、長男アナラウドと次男のカデルの争いを描いていました。
アナラウドを祖として北ウェールズのグウィネズに拠点を置く血筋をアベルファラウ家(Aberffraw)
カデルを祖として西ウェールズ(グウィネズからみると南)のデハイバースに拠点を置く血筋をディネヴァウル家(Dinefwr)
と呼ばれています。
ウェールズ王家の分裂した争いはここから始まり、ウェールズの主導権を奪い合います。ぼくはこの様子を、ウェールズの南北朝時代と呼んでいます。
次回のハウェルとイドワルの動きに注目ください。
※歴史上の出来事や人物が登場しておりますが、フィクションでたなかあきらのオリジナルストーリーです。
第一話:
3本の矢はここにも存在した~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第1話~
第二話:
絡み合わない結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第2話~
第三話:
急流に変貌した結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第3話~
第四話:
磁力の反転 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第4話~
第五話:
混乱の果ての新たな希望 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第5話~
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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