こんにちは。たなかあきらです。
中世ウェールズの歴史をもとに、ストーリーを書きました。
このストーリーをもとに漫画にできたらなあ、と思います。
今回は第四話です。
※時代背景
再び
利害関係が変われば行動は異なってくる。今日の友は明日の敵。ヴァイキングは、あたかも同盟がなかったかのように国境を越えて、アナラウドの領土であるウェールズ北部のグウィネズに攻撃を加えてきた。
うぬぬぬ、略奪を始めてきやがった! ヴァイキングの奴め! 俺を裏切りやがったな!! 今に見ていろ、俺の恐ろしさを思い知らせてやる。きっと後悔するぞ!
アナラウドは赤い顔をさらに赤くして激怒した。次第にヴァイキングへの怒りは、嫉妬への怒りに変貌し、アナラウドの胸は、ムカムカと煮えはじめた。深いため息を、一気に吐き出した。
くそっ、これではカデルの言った通りではないか・・・ヴァイキングとの同盟がダメとなると、他の同盟先を探さねばならぬ。気に入らぬ、カデルの奴も今に見ておれ!
渡航
西暦893年ごろ、アナラウドは苛立ちを隠せないまま、ウェセックス国へ向かった。ウェセックス国はヴァイキングの野望を打ち砕き、近年大きく勢力を伸ばしてきた国である。
ウェセックスはウェールズとは国境で接していないものの、マーシアをはじめとするアングロ・サクソンの国々を傘下に従え、頂点に立とうとしていた。
アナラウドは気が進まないものの意を決し、グレートブリテン島の西部にある北ウェールズから船に乗り込み、大西洋を島に沿って南下し、ウェセックスがある南部へ上陸した。
おやおや、これがウェセックスか。どんな進んだ国かと思いきや、なんと田舎じゃないか。我がウェールズや宿敵マーシアの方が栄えている所があるぞ。
ほう、これがウェセックスの首都ウィンチェスターか。まあ、少しはましな場所だな。あすこが、アルフレッドの宮殿か。アルフレッド王とやらは、どんな田舎坊主なんだろう。いっちょからかってアナラウド様の威厳を示しておこう。
宮殿の門でアナラウドの部下が、アルフレッド王との面会を伝えしばらく待っていた。宮殿の中に通される事になり、守衛兵がアナラウド達を引率した。アナラウドは威厳を保とうと胸を張り、大またでドスドスと庭園を通った。
庭園の途中に守衛兵が待っていた。アナラウドは守衛兵にどちらに行けばよいか尋ねた。
<あちらに見えるお方が、我がウェセックス国の君主、アルフレッド王です>
ほお、あれがアルフレッド王か。
建物の前に人の姿があり、背が高く痩せた若い男が、待っていた。アナラウドは、胸を張ったままアルフレッド王に近づいていった。
偉大なロドリ大王の後継者、アナラウドがウェールズより参りました。アルフレッド王、お会いできて光栄です。
これはこれは、ブリタニア3王として名高いアナラウド殿。よくぞウェセックスにお越しくださった。
アルフレッド王はアナラウドを温かく迎え、きつく握手に応えた。アルフレッド王は背は高く、ややひ弱な優男に見えるものの、鋭い眼光はたしかに見える。静かであるが、数々の困難を切り抜け権力をつかんできたオーラのようなものを感じた。
アナラウドにはアルフレッド王は、何を考えているか分からず、やられないよう注意が必要な人物に思った。まるで、弟カデルに似ている感じがして気に入らなかった。
ご存知の通り、我が国ウェールズはヴァイキングの攻撃にあい、手を焼いております。ウェセックス国もヴァイキングから受ける損害は、ウェールズ以上と聞きます。
ヴァイキングに対して利害をともにする、ウェールズとウェセックスが手を組んで、ヴァイキングとたたかう事が、お互いにとって得策と思われる。是非とも、ウェールズとウェセックスの同盟にご協力いただけませぬか。
アルフレッドはアナラウドをじっと見たまま、静かに聞いていた。口をすぼめていた口を開こうとしたが、もう一度口を閉じた。右上を見ながら、ゆっくりとうなずいた。
なるほど。アナラウド殿の仰ることは、理にかなっていると思います。喜んでアナラウド殿に協力しましょう。
おお、コレはありがたい、とアナラウドはアルフレッドに近づき、握手を求めようとした。しかし、アルフレッドはそれを遮るかのように、キッパリと言い放ったのであった。
運命の再会
ただし、条件があります。条件を飲んでもらわなければ、協力はお断りいたします。
条件とは何でしょうか。何なりと言ってください
アナラウド殿。あなたは、先にヴァイキングと同盟を結んでいたそうじゃないですか。しかし、ヴァイキングに攻撃を受けてしまった。そこで、今度は我々に乗り換えようと、お考えなんですね
むむむ、そっ、それは、
まあ、お答えするのも苦しいでしょう。昨今、同盟とは簡単に破棄されてしまう傾向にあります。ですので、歯止めが必要です。 今や、このブリテン島において、アルフレッドに逆らう者は、ごく少数です。
ヴァイキングを除く他国と同じように、ウェールズもこのアルフレッドに忠誠を誓い傘下に入ることが、協力の条件です。
アナラウドの顔から、みるみる血の気が引き、張っていた胸も、しぼんでしまった。
うぬぬぬ、何と生意気な小僧だ。くそっ、やられた。しかし、後には引けぬ。ここで、じっくり考えて何になろうか。決断力のない、無能な人物とアルフレッドに見られては困る。
いわんや、カデルやメルヴァンに言う必要はない。ウェールズの統治者はオレだ。誰がなんと言おうと、俺の決断で行く。
わかりました、アルフレッド殿。喜んで忠誠を誓いましょう。
アナラウド殿、これは早速の決断、素晴らしいです。これから仲良くやっていきましょう。
アナラウドが書類にサインをし、ようやく、アナラウドはアルフレッド大王と固く握手をした。
よし、これで同盟は成立だ。ヴァイキングを退けることができ、ウェールズも安泰となる。アルフレッドを利用すれば俺の権力も広がるに違いない
では、ウェセックスの傘下にウェールズが入ったところで、話を進めましょう。ヴァイキングごときにウェセックスが出るまでもありません。
この件はウェセックス直接ではなく傘下のマーシアと組んでいただきましょう。マーシアはウェセックスにとって、第1の忠臣。新参のウェールズはマーシアに従って下さい。それが、ウェセックスに対する忠誠となります。
マーシアですと?
アナラウドはギョッとした。マーシアと言われて、出てきた男にひどく驚いたのである。
ほおお、アナラウド殿。奇遇な所で出会ったわね
プーンと香水と化粧の匂いが辺りを漂う。キラリと耳につけているピアスが輝きを放った
エ、エセルレッド! 貴様、生きていたのか!コンウィー川の戦いで、死んだんじゃなかったのか?
その節は、随分とお世話になったわね。仇討ちができてなくて、アナラウド殿はさぞかし残念でしょうね。
でもねぇ、ウェールズとの戦いに敗れたおかげで、我が軍はとんだ被害を被ったのよ。いつか、お返しをしなくちゃ、って思っていたのよ。それが、今度はウェールズがあたしの指図で動くって言うじゃない。
笑っちゃいますわ、おほほほ。ほんと、残念ねえ。お返しができなくなって。でも、これから楽しみね、アナラウドさん。どうやって協力して行きましょうかね、おほほほ。
えっ、ええ・・・
おほほほ
と、エセルレッドはその場を去っていった。
つづく
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