こんにちは。たなかあきらです。
中世ウェールズの歴史をもとに、ストーリーを書きました。
このストーリーをもとに漫画にできたらなあ、と思います。
今回は第5話です。
屈辱
え、エセルレッド! くくっそー、何たる屈辱感。 それに俺はあの男、オレかなり苦手だ・・・
オホホホ~
アナラウドは、ブルブルブルブルっ、と震えた。ふとアナラウドは思った。なぜ、気色悪いエセルレッドが現れたのだろうか? 裏がないだろうか。いや、最初から仕組まれてはいなかったのだろうか?
アナラウドははっと思い当たった。
待てよ、カデルの奴。以前、俺にウェセックスやマーシアとの同盟を勧めたことがあったな。カデルの仕業だったのか?
待てよ、まさか・・・アナラウドな頭の中は、グルグルと回り始めた。しばらく空回りし、ガチャと、ギアがはまった様になった。アナラウドの顔からはみるみる血の気が引き、今度は再び血の気が赤く上ってくるのが分かった。
ウェセックスとの同盟を嫌がった俺をハメるため、まさか、カデルの奴が・・・
奴が、ヴァイキングをそそのかして俺の領土に攻撃させ、ウェセックスとの同盟をするように仕向けたのか。
そうか、そうだったのか。それで話が繋がってきた。カデルは、俺を陥れようと裏でエセルレッドと結託していたのか。
オホホホ~
許せん!カデルの奴。ウェールズ統治者アナラウド様への反逆罪として成敗してやる!
アナラウドは、止む無くウェセックスとの同盟を結ぶためにと重い腰を上げたが、アルフレッド王に上手く計られウェセックスの傘下に入るだけでなく、宿敵マーシアのエセルレッドにまで従わざるを得なく、コケにされてしまった。
オホホホ~
苦い屈辱感と敗北感とともにアナラウドは、ウェールズに戻ってきた。このような扱いをアナラウドは受けた事があっただろうか、ウェールズは経験した事があっただろうか。いや、ウェールズの歴史上、未曾有の出来事であった。
ついにアナラウドは激しい怒りが込み上がってきた。
カデルめ、今に見ていろ。俺様の恐ろしさを思い知らせてやる。
たくらみ
アナラウドは手下を引き連れ居城を飛び出し、隣国へと向かった。
メルヴァン、メルヴァンはおらぬか!
その声に、メルヴァンは驚いた。ケンカ別れ的にバラバラになった三兄弟のうち、長兄のアナラウドが自分の所に来るとは予想していなかったのだ。
さらに、気の弱いメルヴァンは怒りを抑え切れないアナラウドの形相を怖れたのだ。
は、はい、アナラウド兄様。どうされました。そんなこわい顔をして。
どうもこうもあるか。カデルは反逆者だ。メルヴァン、お前すぐに軍を引き連れて、カデルを攻めよ! デハイバースを攻めカデルを捕らえてこい。
何があったんですか?カデル兄さんが何をしたんですか?
メルヴァンの困惑にも、アナラウドはズバッと切り捨てた。
問答無用! オレを誰だと思っているのだ。全ウェールズの君主、アナラウドだぞ。カデルの奴はオレの顔に、未だかつてない泥を塗りやがった。奴はウェールズの敵だ!
カデル兄さんは、侵略戦争で国力を強化するのではなく、国を富ませる仕組みを作ろうって自分の考えをアナラウド兄さんに伝え、その後はじっと動かずにいただけじゃないですか?
問答無用!お前に何が分かる。やけにカデルの肩を持つじゃないか。お前もカデルとグルなのか? メルヴァン、お前はごちゃごちゃ言わず、ウェールズ君主に従え!
君主に従わぬ者は、反逆者と同然。家族もろとも牢に打ち込み、土地財産は没収だ。いいな!
良いか、お前が戦いに出ている間、お前の息子は俺が預かっておくことにしよう。必ずカデルを捕らえてこい。それまでは戻ってくるな、失敗も許さぬぞ。
(アナラウド兄様は何も知らない・・・)
ふん、メルヴァンが勝てば、オレの腹の虫は治まり、オレの権利は強化される。ふふふ、カデルの領土デハイバースは俺のものだ。
たとえメルヴァンが負けても、メルヴァンの敵討ちと俺様への反逆者の成敗、という2つの大義をもってカデルを討てるぞ。
そこに、せっかくの同盟なので、カデル成敗には、エセルレッドも当ててやろう。2人とも潰れてくれればラッキーだぜ。
避けられぬ悩み
メルヴァンは考えた
アナラウドとカデルが戦ったら、ウェールズは真っ二つに別れてしまう。
内乱になると国防が疎かになり、ウェセックスにマーシア、更にはヴァイキングの格好の標的になってしまう。今度こそ、本当にウェールズの危機になってしまう。
メルヴァンは悩んだ。
アナラウドは考えが短絡的で、近隣諸国や自国内の情勢を誤解していた。なぜ、ヴァイキングがアナラウドを攻めたのか、本当の理由を知らなかった。これには秘密があった。恐らくメルヴァンだけが知っていた。
メルヴァンは深く悩んだ。
アナラウドに真相を話すべきなのか、いや話したところで情勢は変わらないだろう。いや、メルヴァンはアナラウドに脅されている身。一家皆殺しになるかも知れない。
悩んだ末、メルヴァンは結論を出した。メルヴァンは、自分のポウィス軍を率いて出発し、カデルの領土へ向かうことにした。
僕にはもう、この方法しか残されていない。
メルヴァン率いるポウィス軍は真っ直ぐにデハイバースにはいり、そのまま進軍し南下してきた。カデルの拠点、ディネヴァウルの近くまで来て、メルヴァンは軍を止めた。
悲しいけれど、僕はもう後戻りはできない。戦いは避けることはできなくなってしまった。僕にできることをやるしかない。
メルヴァンは覚悟を決めた。これまで、アナラウドやカデルの影に隠れ、存在感は薄かったが、ここでやるしかない、と思った。
僕の力が無かった。ぼくの役割だったのに、兄さんたちを上手く繋げることが出来なかった。
メルヴァンは少数の軍隊を派遣し、真っ正面から攻撃を始めた。その様子をみて、カデルも少数の軍隊を動かし、応戦をした。
しかし、お互い様子を見ているのだろうか、戦争と呼ぶには程遠く、小競り合いのようであった。とにかく、戦いは始まった。
よし行くぞ。
メルヴァンは僅かな兵を引き連れて、ディネヴァウルの要塞城の裏に回った。裏口から城の中に進入しようという考えであった。
しかし、城の裏には兵もいなく、なぜか裏口は無防備にも開け広げられていた
メルヴァンは静寂さを怪しく感じながらも、何か導かれているような気がして、先を進んだ
メルヴァン!
突然、背後から声がして、裏口が閉じられた。
バタン
なにっ
つづく・・・
メルヴァンの奴、本当にオレと戦うつもりなのか?いや、奴の事だ。きっと、言えぬ何か裏がありそうだ。見張りを多く放っておこう
オホホホ~ www.rekishiwales.com
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
創作歴史ストーリー(26話。1~5話のリライトが本記事です)
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