こんにちは。たなかあきらです。
中世ウェールズの歴史をもとに、ストーリーを書きました。
このストーリーをもとに漫画にできたらなあ、と思います。
今回は第6話です。
争いの裏
カデル!
メルヴァンは声が響いた方を向いた。
メルヴァン、来ると思った。戦うと見せて、密かに裏口から侵入するとはな。やはり、アナラウドの差し金か。
しまった。読まれていたのか。カデル兄さんこそ、僕の動きを予測して、裏口を開けていたんですね
メルヴァンはやや慌てながらも、小心者だが肝が座り、落ち着いて答えた。
カデル兄さんの想像の通りです。カデルを捕らえて連れてこい、とアナラウドから命令を受け、軍を率いてここに来ました。
そう簡単には俺は捕まらないぞ。
分かってます。カデル兄さんを捕まえようとは思いません。僕と一緒にアナラウドの所に行って欲しいんです。
メルヴァンは、カデルに請う様に答えた。
嫌だと言ったら?
2人の間の沈黙が、辺りに広がった。カデルの相変わらず冷淡で沈着な表情が、静けさを深めた。
メルヴァンがポツリと、小さく答えた。小さいが、大きくウェールズを動かす内容であった。
アナラウドは、カデルを反逆者で成敗すべきだ、と言っているけど、あれは言いがかりです。僕のせいなんです。
メルヴァンのせい?それはどういう事なんだ
明かされた真実
その頃、アナラウドの元に、一通の手紙が届けられた。手紙を読んで、アナラウドの表情がみるみる変わって行った。激怒した。
メルヴァンの奴め、おれを裏切っていたのか。ヴァイキングをそそのかして、おれを攻めたのは、メルヴァンか!カデルと結託して、俺様を陥れようとしたのか。
断じて許せぬ! ウェールズ君主への謀反だ。カデル共々、成敗してやる。奴らの領土もおれが奪ってやる
カデルは赤い顔を更に赤くして激怒した。
むむむ、腹の虫が収まらぬわ。気に食わぬが、こういう時の同盟だ。マーシアのエセルレッドに要請して、奴らを叩き潰してやろう。
メルヴァン、お前は何でヴァイキングを利用したんだ。
それは、、、
メルヴァンは苦しくなった。決して言わないでおこうと心に決めたことを、小心者が今、話すのは勇気が必要だった。
それは。僕は。
アナラウドを止めたかったんです。ヴァイキングと手を結ぶのは良くないです。
うむ、そう思うが。
アナラウドにヴァイキングとの同盟をやめさせたかった。カデル兄さんの考えと同じくウェールズ内の結束を固め、ウェセックスと同盟を結んだ方がよいと思ったんです。
だから、ヴァイキングがアナラウドを裏切ったように見せようとしたのです。それで、僕はヴァイキングを雇いカネを握らせて、アナラウドを攻めるように仕向けたのです。
アナラウドがヴァイキングを見限り、ウェセックスと同盟を結びに行ったところまでは良かったんですが。宿敵エセルレッドが生きていて、アナラウドの気を害したのが、誤算でした。
どうすれば・・・
ああ、ぼくのせいだ。どうすれば・・・ウェールズを混乱に導いてしまって、僕はどうすれば良いのでしょうか。
ううむ。アナラウドはすぐ逆上する。しかし、強大な力には弱い。やはり、ウェセックスのアルフレッド王の力を借りるのが得策だろう
その時だ。メルヴァンをめがけて、男が走った。閃光が光り、メルヴァンの体を突き抜けた。
うぐぐっ、ぐはっ
メルヴァン!
ぐはっ、、、
くそっ、メルヴァンの部下に、アナラウドの刺客が混ざっていたか。刺客は捕らえろ、ここから出すな
メルヴァン!
ぐはっ、、、メルヴァンは聞き取れるか分からない程のひ弱い音が口からもれた。
僕はアナラウドに脅されていたんだ。カデル兄さんを討たなければ、僕の国ポウィスは攻撃され奪われてしまう。アナラウドの所には戻りたくなかった。これで、もうアナラウドの言いなりにならなくて済みます。
本当は、もっとカデルの力になりたかった。カデルと平和な国を作りたかった。僕の国、ポウィスとウェールズを頼みます。ぐはっ
メルヴァンは力無く、息絶えた。
メルヴァン!ああ、メルヴァン。なんてことだ。なんてことになってしまったんだ。
さすがに、この時ばかりはカデルも静けさを続けることはできなかった。
つづく
※これまでの話一覧
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※ウェールズの歴史について
※創作歴史ストーリー(26話。1~5話のリライト版が本記事です)
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