こんにちは。たなかあきらです。
中世ウェールズの歴史をもとに、ストーリーを書きました。
このストーリーをもとに漫画にできたらなあ、と思います。
今回は第7話で、最終回です。
頼みの綱
アナラウドを止め、メルヴァンの気持ちに応えようと、カデルは行動に出た。沈着なカデルではあるが、動くと決めると迅速だ。
カデルは拠点のディネヴァウルを発ちウェセックスにいるアルフレッドのもとに急いだ。
・・・すでにウェールズの君主としてアナラウドがウェセックスと関係を築いている。と果たしてアルフレッド王はカデルを受け入れてくれるのだろうか・・・
一抹の不安はあるものの、カデルはアルフレッドの宮殿にたどり着き、静かにひざまずいた。
アルフレッド大王!
カデルはアルフレッド大王と初対面ではあったし、沈着な性格には珍しく、熱く訴えるように語り始めた。
カデル殿の噂はよく聴いております。エセルレッドが破れたコンウィ川の戦いでは見事な采配でしたね。いつか、お会いしたいと思っていました。
こうしてカデル殿の姿を見ていると、父君ハウェル大王の面影を強く感じます。ハウェル大王には、いろいろとお世話になりました。その恩返しをさせていただきたいです
カデルの予想に反し、カデルはアルフレッドから歓迎を受けたのだ。カデルはほっと胸をなでおろし、興奮を感じながらもいつもの冷静なカデルに戻っていった。
アナラウド殿との関係はあるが、カデル殿とは同盟を結び、是非親交を深めたいと思います。困った事があれば、是非言ってください。ご協力させていただきますよ。
ありがとうございます。アルフレッド大王
カデルは静かに、喜びを噛み締めながら、アルフレッドと握手をした
冷静で沈着な者同士、手を組んだのである。
暴君誕生
その頃、熱い者たちは奮闘していた。エセルレッド率いるマーシアの大軍が、ウェールズに進入を開始していた。
ほおお、待ってましたのよ! いよいよ出番ね。アナラウドは好かない奴だけど、カデルはもっと癪にさわるわ~。コンウィの戦いはカデルの作戦にやられたのも同然。タップリとお返しをしないといけないわ。
カデルの野郎、見ていやがれ。滅ぼしてやる!
さあ、誰でもかかっていらっしぁい! 可愛がってあげるわよ!
895年、エセルレッド率いるマーシア軍はアナラウド軍と合流し、カデルの国デハイバースを攻めて略奪、虐殺、放火行為を繰り返した。
アルフレッドとの面会を終え、カデルが急いで戻った時には既に遅かった。リーダー不在のデハイバース軍は果敢に立ち向かったが、敗れ去りひどく荒廃した。
ああ、デハイバースが・・・・
ホホホホ、いい気味だわ。カデルに仕返ししてやったわ。ああ、スッキリした。
ざまあみろ、カデル。お前の思うようには世の中は動かんさ。これからはアナラウドの世の中だ。俺に歯向かうやつは何人たりも許しはしないぞ!
マーシア軍のバックを武器に、アナラウドはウェールズ内の勢力を広げ、権力を我が物にしたようとした。気に入らないものは排除し、やりたい放題の独裁を続け、暴君アナラウドと人は呼ぶようになっていた。
ハハハハハっ、おれを誰だと思っているのだ。アナラウド様だ!
ところが、アナラウドの勢いもここまでだった。カデルの根回しが効き始めていたのだった。
最終の決戦
翌年の897年、エセルレッド率いるマーシア軍は再びウェールズに進軍した。
状況が変わったって、アルフレッド大王の言うことは、わけ分かんない。この前は、アナラウドに加担してカデルを攻め、終わったかと思ったら、今度はアナラウドを攻めろって。アルフレッド王は何を考えているのかしら。
まあ、いいわ。アナラウドは、あたしのタイプじゃない嫌な男だし、昔のリベンジが出来るから、歓迎はするわ。
だけど、カデルと組むのは嫌だわ。この前、領土に攻撃してムチャクチャにしてやったばかりじゃない。今日の敵は明日の味方って言うけど、気が乗らないわねえ。
昔の戦いではよく見えなかったけど、カデルはどんな男かしら
プーンと香水の匂いを漂わせながら、エセルレッドは髪をかきあげた。
エセルレッドが張っていた陣営に、自軍を率いたカデルが到着した。
エセルレッド殿、遅れて申し訳ありませぬ。デハイバースの為に、自ら軍を率い加勢してくださり、誠にかたじけない。感謝につきます。
顔を上げたカデルを見て、エセルレッドは、はっとした。
まあ、あなたがカデル殿。
エセルレッドの表情がガラリと変わり、ぽっと肌を紅葉させた。
あら、いい男。あたしの好みじゃないの。そうとなったら、話は別よ。
あの時は命を落とすかて思ったわ。でも、もう許しちゃうわ。
あ、あらいやだ。お化粧して直してこなくっちゃ。おほほほ
うぷっ
カデルとエセルレッドの連合軍は、デハイバースを占領していたアナラウド軍をことごとく破った。
ひゃー、エセルレッドにカデルが攻めてきた。どうなっているんだ!
ああああああぁぁぁぁぁ~
連合軍はアナラウド軍を後退させ、自国グウィネズに追い返し、領土を取り戻すことに成功した。
や、やったわー。アナラウドに仕返しをしてやったわー。あたし、頑張っちゃった、ウフフフフ
悩みと希望
やはり、良くない。
戦いに勝利したものの、カデルは考えた。このような戦いをやって良かったのだろうか。得たものはあっただろうか?
いや、国は荒廃し、弟メルヴァンも失ってしまった。最初から食い止める方法はなかったのだろうか。
冷静に考え続けた。どう考えても、今のウェールズは良くない。ウェールズの大王だった、父ロドリはどう言うだろう?今のカデルには、有効な答えは出てこなかった。
今は、アルフレッド王と手を組んで、安泰を図ろう。アナラウドだけでなく、エセルレッドも、関わらない方が良いな。
カデルはそう思った。
その後、アナラウドはウェールズの君主ではあり続けたものの勢いは失った。アルフレッド王やエセルレッドを恐れ、再び争いを起こす事はなかった。
💦
カデルはアルフレッド王を盾にエセルレッドを遠ざけながら、荒廃した領土を立て直した。そして、近隣のウェールズ小国を吸収し、西とみなみウェールズで勢力基盤を固めることに成功した。
息子よ、ハウェルよ。ウェールズはついこの前まで、ひどい世の中であった。また、いつ戦乱の世になるか分からぬ。でも、そうなってはダメだ。
お前が立ち上がり、我が父ロドリ大王のように、再びウェールズを統一し平和な時代にしてくれ。そのためにしっかり学び実力を蓄えてくれ。
ワシはアルフレッド大王がいるイングランドに行ったことがある。
法律がきちんと整備され、独裁ではなく政治の仕組みがきちんとできていた素晴らしい国であった。
今のウェールズはどうか? なんの決まりもなく自分たちの首を絞めあう野蛮な国だ。
ハウェルよ、お前はそんな平和で進化したウェールズを作ってくれ。
「はい、父上。しっかり勉強してウェールズを良い国にします!」
このハウェルと呼ばれた少年、この動乱の世の中で立ち上がり、ウェールズを統一し未来を作る人物になるのである。
終わり
最後まで読んでくださり、 有難うございました。
※これまでの話一覧
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※ウェールズの歴史について
※創作歴史ストーリー(全26話。1~5話のリライト版が本記事です)
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