こんばんは。ウェールズ歴史研究家を名乗る、たなかあきらです。
円卓の騎士、今回はライオネル卿のご紹介です。
僕のライオネル卿の印象は、いつも可哀そうな騎士なんですよ。
※円卓の騎士一覧:「円卓の騎士」の一覧
ちょっと可哀そうな境遇
「ライオネル卿は、ライオンに似たアザがあったことから、ライオネルと名づけられた、という名前は勇ましいんだけど・・・」
「ライオネル卿は、子供のころから可哀そうだったんですか?」
「そうなんだよ。ライオネル卿は、フランスのヴァンヌ地方を治めるボールス王の息子なんだけど、父ボールス王が宿敵クラウダス王に殺されてから、兄ボールス卿とともに、父の旧友ファリアン卿の保護のもと、敵国の人質として暮らしたんだ」※1
「円卓の騎士になっているということは、抜け出したんですよね」
「セライドと呼ばれる女司祭が、二人をグレーハウンド犬に姿を変えて何とか脱出したんだ。そして、ランスロット卿とともに、湖の乙女のもとで教育を受けたんだよ。ライオネル卿は、生涯ランスロット卿の味方だったようだね。」
円卓の騎士になるも、またして・・・
「成長したライオネル卿は、ボールス卿はランスロット卿と共にブリタニアに行き、そこで円卓の騎士となったんだ」
「そして、ライオネル卿の最初の任務は、ボールス卿、ガウェイン卿、ベディベレ卿と共に、ローマ皇帝ルキウスとの争いの際に、使者として出向くことであった」
「アーサー王のフランス領土に、ルキウス軍が侵入した際に、立ち去るように送った使者ですね」※2
「そうそう。戻る途中、ランスロット卿が寝ている間に、他の4人は敵に襲われてしまうんだ。4人はトールキン卿と呼ばれる、円卓の騎士に敵対する騎士に負けてしまうんだ」
「負けてどうなってしまうのですか? 」
「ライオネル卿以外の仲間は、アーサー王の異父姉、魔女のモルガン・ル・フェイに投獄されてたんだが、すぐに出れたようだ。しかし、ライオネル卿だけが裸のまま牢にぶち込まれてしまい、出れなかったんだ。仲間たちが解放され、助けに来てもらうのを待たなきゃ、ならなかったんだ」
リンチを受けるライオネル卿
「今度は聖杯探索での話だ。旅の途中、ライオネル卿は悪魔騎士に捕らえられ、またもや、裸にされて縛られ、足蹴りにされ、引きずられ、イバラの鞭で打たれるなど、激しいリンチを受けたんだ」
「えっ、そんなリンチを受けて、ライオネル卿は大丈夫だったのですか?」
「一説によると、死亡して生き返ったとも、命からがら脱出したとも言われているがね。兄のボールス卿は、ライオネル卿がリンチを受けている場面を目撃したんだ」
「それじゃあ、ボールス卿はライオネル卿を助けなかったんですか?」
「君ならどうする? 一方では弟がリンチを受けている、他方では乙女が男たちに襲われ助けを求めている。君はどちらを助ける? 」
「ん~、やっぱり乙女かなあ」
「騎士道にも「御婦人には優しく」とある通り、ボールス卿は乙女を先に助けて、あとからライオネル卿を助けようとしたんだ」
「やっぱ、そうですよね」
「しかし、ライオネル卿は、このボールス卿の行動を喜ばしくは思わなかった。そして、次に会ったときに、自分を助けなかったボールス卿を恨み、ライオネル卿は剣を手にとり、ボールス卿に襲い掛かったんだ」
「ボールス卿は戦うことを拒み無防備状態で、二人の争いを止めようと中に入ったコルグレヴァンス卿と隠者が殺されてしまったんだ。そして、ボールス卿に一撃をくらわそうとライオネル卿が県に手を伸ばしたときに、天から火の玉が降りてきて、辛うじて戦いを止めたんだよ」
「ここでのライオネル卿は可哀そうですけど、行動は受け入れがたいですね」
可哀そうな最期
「ライオネル卿は、ずっとランスロット卿の味方だったんだよ。ランスロットとグウィネヴィア王妃との不倫がバレて、アーサー王とランスロット卿との争いが起きたときにも、ランスロット卿側についたんだ」
「アーサー王との戦うことになったとき、ライオネル卿はランスロットともに、追放されてフランスに渡ったんだ」
「そこでアーサー王とランスロット卿は戦い始めるけど、モルドレッド卿が反乱をおこし、アーサー王はブリタニアに戻るんだ。そしてカムランの戦いで相討ちになってしまうんだ。ライオネル卿は、モルドレッド軍の残党をやっつけ、ランスロット卿を探すために再びブリタニアに戻ったんだ」
「しかし、ライオネル卿はドーヴァーからロンドンまで旅をする途中に、モルドレッドの息子メラハンに出会ってしまい争いとなって、ランスロット卿と会うことなく最期を遂げたんだ」
「ランスロット卿に出会えなかったし、色々とライオネル卿は可哀そうですね」
「そうだな、気の毒だなあ。でも、強い騎士もいるし、弱い騎士もいる、善良な騎士もいれば、悪者もいる。いろんな個性の人々がいるから、アーサー王物語は面白いのかもしれないな」
※ライオネル卿はアニメ映画「魔法の剣 キャメロット」に、主役の少女ケイリーの父親として登場しています。
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