こんにちは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。
話題が満載すぎるウェールズを見守る王、という内容で、ラウェリン大王について、シリーズでお話をしております。
ラウェリン大王は様々な特徴をもっており、ウェールズに大きな影響を与えたとても興味深い人物です。
・話題が満載すぎる、ウェールズを見守る大王
・史上例を見ない暴君を倒したウェールズの王子 –
・敵が味方に、味方が敵に、昨日の友は今日の敵だったウェールズの王
・絶体絶命のピンチを嫁に助けられたウェールズの王
・ジョン失地王と渡り合ったウェールズ王の活躍
・次男を溺愛しすぎて、世の中と喧嘩した男
今回は、⑥つ目の最後のお話です。
非嫡子を愛した大王
ラウェリン大王と2人の息子、グリフィズどダヴィッズ
12世紀に活躍したウェールズの王であるラウェリンの祖父も、ウェールズで勢力を広げ、オウァイン大王と呼ばれました。オウァインは国をよく治めましたが、禁断の恋で国を混乱に陥れたのでした。
ラウェリンには2人の息子がいました。長男のグリフィズと次男のダヴィッズです。
長男のグリフィズはウェールズ人の正妻との息子で、ウェールズ法ではグリフィズが後継者としての資格がありました。
しかし、、、
「ダヴィッズ、お前は立派で素晴らしい。ワシの後継になる素質がある」
「しかし、僕よりグリフィズ兄さんが次の王じゃ、ないですか?」
「心配するな、きっとお前を王にしてやるぞ」
ラウェリンは、ウェールズ法では非嫡出子のダヴィッズを溺愛したのでした。
ラウェリンがダヴィッズを溺愛した理由は2つ考えられました。一つ目は、グリフィズは気性が激しく、ラウェリンが領土を分け与えると、圧政を繰り返したりしていました。
もう一つの理由は、ダヴィッズは非嫡子の扱いでしたが、母ジョアンはイングランドのジョン王の娘(しかし非嫡子)だったのです。
恐らく、イングランドとの良好な関係を築くためにも、ダヴィッズが後継者になった方が、ラウェリンに都合が良かったかも知れません。
「グリフィズの奴は、頭を冷やさないとダメだ。ちょっとお灸を据えてやろう」
「グリフィズ、お前はイングランドに送るぞ」
ジョン王から人質要求があった時、ラウェリンはグリフィズを人質として差し出し、ウェールズとイングランドとの良好な関係を保とうとしました。そして、グリフィズが居ない間に、ラウェリンはダヴィッズを後継者にしようと様々な口実を作り、手はずを整えていました。
狂気の溺愛
しかし、ジョン王によってマグナカルタが制定された時、晴れてグリフィズは解放され、ウェールズに帰ってきました。
「グリフィズが帰って来てしまったか。もっと人質でいてくれればいいのに。他の手を考えよう」
そんな中、マグナカルタが制定された翌年に、ジョン王は赤痢で亡くなり、ヘンリー二世が新たなイングランド王になりました。
「よし、ヘンリー三世との関係を築くために、無理やりにでもグリフィズを人質に送ろう」
再びグリフィズはイングランドに送還され、ラウェリンは裏工作を始めました。
・ローマ法皇ホノリウス三世に、ダヴィッズが後継者になれるように説得を続けた
・ウェールズでは、嫡子も非嫡子も誰でも相続権があり後継者は長男がなる、というローマ法皇が嫌っていたウェールズ法を一部を改定した。
・ヘンリー三世にも取り入り、ダヴィッズの後継を認めさせようとした。
・ウェールズの諸侯たちに圧力をかけ、ダヴィッズに忠誠を誓わせた
などなど、あれこれと策略を巡らし、ついにダヴィッズがラウェリンの後継者になることを、世に認めさせる事ができました。
溺愛の代償
こうして、父に溺愛されたダヴィッズはラウェリンの後を継ぎ王となり、初代のプリンス・オブ・ウェールズを宣言しました。
これで、ウェールズは平和になったかというと、そうではなかったのです。ウェールズは混沌としてしまったのでした。
ラウェリンが1240年に亡くなると状況は一変しました。本来のウェールズ法による後継者グリフィズを支持する人々が立ち上がり、ダヴィッズに対立を挑んできたのでした。
反乱軍に怒ったダヴィッズは、グリフィズの領土を攻撃し、占領します。
これに対し、捕らわれの身であったグリフィズは反撃を企てました。軟禁されついたロンドン塔から脱出を図ります。しかし、不運にも転落死してしまいました。
この一連の動きをしたたかな目で見ていた人物がいました。一度はダヴィッズを支持した、ヘンリー三世でしたが、ラウェリンが亡くなると、知らんわな、とばかりにダヴィッズに攻撃を仕掛けてきました。
ウェールズは大混乱に陥ります。イングランドに攻められ、弱体化が進んでいく事になったのです。
時代は繰り返される?
振り返ってみると、一時はウェールズの黄金時代を築いたラウェリンでしたが、ダヴィッズを溺愛し、法に従わず無理やり後継者にしたことが発端で、ウェールズを混乱に導いてしまった気がします。
祖父オウァインは従妹を溺愛し、法でも協会でも禁じられた結婚に踏み切りました。その子供が後継者になり、ウェールズは大混乱に陥りました。そんな祖父の歴史がありました。
ラウェリンの祖父オウァインが行なった、王としての似たような過ち。やはり時代は繰り返されるのでしょうか?
ダヴィッズが亡くなった後は、グリフィズの息子ラウェリン・グリフィズが、プリンス・オブ・ウェールズになりました。
※この記事は史実に基づいておりますが、会話などは筆者の想像が大いに入っております
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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