(18.7.31更新)
こんばんは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。
今回ご紹介する人物はウェールズで大王と呼ばれた人物ですが、日本で知る人は殆どいないと思います。
コンウィにあるラウェリン像
四国ほどの小さな国、ウェールズでは歴史を大きく動かした重要人物です。彼の名は、ラウェリン・アプ・イオルウェルス(Lywelyn ap Iorwerth:イオルウェルスの息子ラウェリンという意味)。プロレスラーの名前の様な、ラウェリン・ザ・グレート(大王)と呼ばれたウェールズの統治者です。
話題満載のウェールズ大王
「大王と呼ばれるからには、相当大きな仕事をしたのであろう、誰もがそう思うでしょう。その通り、ラウァリンは名に恥じない偉業を成し遂げています」
「今回、ラウェリン大王の記事を書こうと思い書き始めましたが、どうやってラウェリンを表現しようか、ひどく悩んでしまいました。というのも、ラウェリンはあまりにも突っ込みどころの多い、話題満載の人物だったからです。」
「これだけで表現はできませんが、あえてラウェリン大王の特徴について簡単に表現してみました」
・13世紀に活躍し、現在もウェールズの街を見守っている男
・史上例を見ない暴君をやっつけて、雪辱を果たした男
・敵が味方に、味方が敵に、昨日の友は今日の敵だった男
・絶体絶命のピンチを、嫁に助けられた男
・悪王で有名なイングランド王と渡り合った男
・次男を溺愛しすぎて、世の中と喧嘩した男
「どんな人物なのか、想像はつきますか? 色んな要素が混ぜこぜになっていて、つかみどころが無いかもしれません」
「何度も喧嘩をし、そのたびに仲直りをし、ピンチになったら嫁に助けられ、子供を溺愛し、そして伝説になった男。こういう見方をすると、感情表現が豊かでとても人間味あふれる、魅力的な人物だったのかもしれない、と思います。だから、人々の心に残り、現在まで語り継がれているのかもしれません」
13世紀に活躍し、現在もウェールズの街を見守っている男
「ものすごく簡単にラウェリンの紹介と、現在のラウェリンの話もしましょう。ラウェリンは、12世紀の後半にウェールズ王室の家系に生まれました。後継者の血筋だったので、生まれたときから、将来はウェールズの王に、という皆の期待を背負っていました。でも、戦乱の世の中、簡単には王にはなれませんし、領土を治めることもできませんでした」
「ラウェリンの思いは、ウェールズをイングランドから守りたい、奪われた領土を元の自分たちの手に戻したい。ウェールズの人々が、ウェールズでイングランドから邪魔されず暮らせる世の中を手に入れたい。この思いのために、ラウェリンは常に戦いに挑んでいたんじゃないか、と思います」
「ラウェリンが得ることのできた勢力範囲を示します。黄色がラウェリンの領土、灰色の部分がラウェリン傘下の領土、緑色の部分がイングランドです。黄色と灰色を足したラウェリンの勢力範囲は、現在のウェールズにほぼ近く、これだけ広大な範囲の領土を治めた統治者は、ウェールズの歴史の中で、ほんの数名ほどしかいません」
「ラウェリンの息子の時代から、ウェールズの統治者はプリンス・オブ・ウェールズと呼ばれるようになりましたが、歴代のウェールズ人のプリンス・オブ・ウェールズよりも勢力を持っていたのです。これらが、ラウェリンが大王と呼ばれている所以だと思います」
写真はウィキペディアより。黄色と灰色がラウェリンの勢力範囲。
(現在のほぼウェールズの範囲に相当します)
「さて、ラウェリンは現在はどうしているのでしょうか?」
「ウェールズに残されている世界遺産に、コンウィ城があります。地図中ではラウェリンの領土である黄色の部分です」
「ラウェリンの時代よりも50年ほど後の13世紀末に、ウェールズはイングランドに占領されてしまいます。その時に、イングランドのエドワード1世がウェールズを監視しするため、付近のイングランド人が住む町をウェールズ人の反乱から守る為に建てた要塞です」
(上:コンウィ城。下:コンウィの街にあるラウェリン像)
「このコンウィ城がある地域も、現在はウェールズに戻っています。そしてコンウィ城のすぐ傍らの街に、ラウェリンの像が建てられています」
「ウェールズをイングランドから守る為に活躍したラウェリン大王は、現在はラウェリン像となって、コンウィの街に住むウェールズの人々や、観光客を暖かく迎え見守っています」
「ラウェリンは、ほぼウェールズを統一した実績を持ち、人々の心にも残った歴史上の英雄と言えるのではないかと思います。話題が満載な、ラウェリン・ザ・グレート。プロレスラーみたいな名前ですが、覚えてもらえると嬉しく思います」
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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