こんにちは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。
アーサー王物語の中で、アーサー王に敵対する人物がモルドレッドです。モルドレッドは、複雑な家庭環境の中で育ち、そのためか陰謀を企て、円卓の騎士を崩壊へと導いています。
モルドレッドの人物像についてお話していきたいと思います。
※円卓の騎士についての記事
モルドレッドの陰謀
モルドレッドの生い立ち
モルドレッドは、オークニーのロット王と、アーサー王の半姉モルゴースとの息子なんだ。最強の円卓の騎士の一人と言われているガウェイン卿や、ガヘレス卿、アグラヴェイン卿と兄弟ってことだ。
ということは、アーサー王も甥になるんですね。
ところが、ロット王は育ての親と言われていて、実はアーサー王がモルゴースを半姉とは知らずに寝てしまい、その時の子供らしい。
近親相姦じゃないですか
この時代は多くあったかもしれないな。その後、アーサー王は悪夢を見たため魔法使いのマーリンに相談したんだ。マーリンの予言は「5月1日に産まれた子供は、国を滅ぼすだろう」と予言したため、5月1日に産まれた子供を集めて、全員殺そうと船に乗せ海に流したんだ。
なんと。アーサー王でもそんな残酷非道なことをするんですか!ちょっと残念です。
船は沈んでしまったけれど、モルドレッドだけが奇跡的に島の岸に打ち上げられて、生き延びたんだ。モルドレッドはナバール卿(Lord Nabur、円卓の騎士サグラモール卿の父)に育てられたんだ。
マーリンの予言のために、アーサー王は多くの子供を殺してしまったんですね。それも、目的のモルドレッドは生き延びて・・・可哀そう。
その後、モルドレッドはどうなっていくのですか?
円卓の騎士モルドレッド
成長したモルドレッドは、アーサー王のもとを訪れ、そこで初めて父母と会ったそうだ。モルドレッドはアーサー王の息子であるし(これはシークレット)、兄弟のガウェイン卿の名声を生かして、円卓の騎士になったんだ。
モルドレッドって、悪いんでしょ。騎士道を重んじる、円卓の騎士は務まらないと思うんですけど・・・
そうなんだけどな。モルドレッドの行動は決して良くなかったんだ。円卓の騎士になったモルドレッドは、ランスロットと行動を共にすることがあったけれど、ランスロットの騎士として素晴らしい忠誠心や人道的な行いを、学ぶことはなかったんだ。
それどころか、騎士を打ちのめし、その間に騎士の妻と情事を働いたり、時には夫人をレイプしたり殺したりすることもあったらしい。ペリノア卿の息子とトラブりになったときも、ラモラック卿をだまして殺害したんだ。
そんな、極悪非道で、円卓の騎士としては反面教師の、モルドレッドは、早く首にしないとダメじゃないですか。
ところが、アーサー王はモルドレッドが実のこと知ってか、モルドレッドを好む場面がみられるんだ。例えば、アーサー王がヨーロッパ大陸に遠征したとき(ローマ皇帝ルキウスとの戦い、ランスロットとの戦い)、アーサー王はモルドレッドを摂政にして、留守の間キャメロットを任せるんだ。
しかし、それが裏目に出るんでしょ?
モルドレッドの陰謀
企むモルドレッド。映画「円卓の騎士より」
他の参考映画
そうなんだ。モルドレッドには大いなる野望があったんだ。アーサー王の息子だから、次期王は自分だ、というだけでなく、アーサー王から王を奪ってやろうという陰謀を感じるんだ。
アーサー王に関するさまざまな映画を観ていると、ランスロットとグィネヴィア王妃の不倫を上手く利用して、円卓の騎士とランスロットの関係を崩し、さらにはアーサー王とランスロットの信頼関係をも悪化させようと企んでるんだ。そうやって、アーサー王と円卓の騎士を崩壊させて、国を乗っ取ってやろうとね。
そして、ランスロットとの戦いでアーサー王がキャメロットを留守にする間、摂政になったモルドレッドは、「これは国を乗っ取るチャンスだ」とばかりに、アーサー王を欺くんだ。
モルドレッドは、敵のサクソン族やピクト族と手を組んで「アーサー王は死んだ」とウソをつき、自分が王になろうとしたんだ。
さらに、王妃グィネヴィアを妻にしようとしたんだ。グィネヴィアはロンドンの塔に逃げ込んで、バリケードを張って防いでいたんだ。
モルドレッドの反逆のニュースを聞きつけたアーサー王はランスロットの争いを中断し、ブリタニアに急きょ帰り、モルドレッドとの戦いが始まったんだ。
リッチボロー(もしくはドーヴァー)での戦い、ウィンチェスター(またはバーラム)での戦いではアーサー王が勝利し、モルドレッドは西のコーンウォール方面に逃れていったんだ。そして、最後の戦いである、カムランの戦いで両軍は激突するんだ。
非常に激しい戦いで両軍はほぼ全滅し、残るはアーサー王とモルドレッドだけになったんだ。モルドレッドはアーサー王の剣で命を落としたけれど、その直前にアーサー王に致命的な一撃を与えたんだ。こうして二人は戦死し、アーサー王はアヴァロンに流された、っていう話だ。
アーサー王の物語は、何とも切ないエンディングになってしまいますね。やっぱり英雄には、対抗する悪役がいたほうが話が盛り上がって良いんでしょうね。円卓の騎士たちにはモデルとなる実在人物がいるように、モルドレッドも実在人物なのですか?
モルドレッドのモデル人物 陰謀は作り話?
※モルドレッドの出身地。詳しくは兄弟のガウェイン卿の記事へ。
実は、モルドレッドはメドラウドと言って、現在のスコットランドにあったゴドッディン国の出身で、父のロット王が治めていたんだ。ウェールズの情報によると、モルドレッドは悪人というより立派な人物で、平和を求める知恵と戦場でのどう猛さの両面を兼ね備えていたようだ。アーサー王と敵対するというより、アーサー王と共に戦ったらしいよ。
ということは、アーサー王物語を面白くするために、モルドレッドは悪役に仕立て上げられたのかもしれませんね。
悪役の部分は、別の人物がモルドレッドのモデルになっている可能性があるんだ。6世紀の中頃、ウェールズの王であったマエルグウィン・グウィネズという王だよ。
そのマエルグウィンはどんな悪だったんですか?
マエルグウィンは激しい気性で、人を欺いたり叔父の嫁を奪い取ったり、人道から外れた人物だったようだ。
マエルグウィンの叔父オウァインがウェールズの王だったんだけど、マエルグウィンは叔父オウァインを倒して、王を奪おうと陰謀を企てたんだ。このオウァインこそが、アーサー王じゃないか?という説もあるんだよ。
本当ですね。マエルグウィンの性格や、王への陰謀は、モルドレッドにそっくりですね。
アーサー王物語のモルドレッドとは違って、実際のマエルグウィンは叔父オウァインを戦いで殺して、王になったんだけどね。
つまり、実際の実在のモルドレッドは、円卓の騎士として恥ずかしくないような立派な騎士で、アーサー王を倒そうなどという陰謀は企ててはいなかった。だけど、アーサー王物語を面白くするために、モルドレッドにマエルグウィンの悪の要素を入れ込んで、アーサー王を倒そうという陰謀を作り上げた、という可能性がある、ってことですね。
※マエルグウィンに関する記事
※アーサー王のモデルといわれる、オウァインに関する記事
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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