こんばんは。ウェールズ歴史研究家を名乗る、たなかあきらです。
前回から、たなかあきらの創作歴史ストーリー「新たたかうカムリ戦士」、の連載をスタートさせました。前回は第一話で、戦争が怖い弱弱しい主人公が乱世の中に出現しました。さて、今回は、仕方なく主人公は戦いに巻き込まれていきますが・・・
※これまでのたたかうカムリ戦士記事一覧
ここはウェールズの南部の国モーガンウィグ。古くからモーガン王の一族が治めていたが、近年になって領土を広げようと野心を持つオウァイン王と息子エイニオンが率いる隣国のデハイバース軍の侵略攻撃に苦しんでいた。
「またデハイバース軍の奴らが攻めてきたか。相変わらずシツコイ奴らじゃ」
「どうしましょうか、モーガン王」
「我らの国を奪おうとする奴らに対しては、断固として抗戦するのみじゃ。屈するわけにはいかんよ。ワシらは決して奪い取る戦いではなく、自分らを守る戦いに徹するのじゃ。Jr.よ、守りに重点を置き、兵力を固めてくれ」
「はい、かしこまりました。父上」
「オウァインは欲が深い人間じゃ。北の方にもイアゴという、これまた大きな野望を抱く者がおる。ワシら南部の者は、ただでさえ海を渡って頻繁に攻めてくるヴァイキングを追っ払うのに精一杯じゃ。ただ、ワシらは安心して平穏に暮らしたいだけなのじゃ。もう勘弁してもらえんかのう」
一方、モーガンウィグの隣国、デハイバース国。
「父上、兄上、やはりモーガンウィグに攻撃をせねばならないのでしょうか?」
「当たり前だ。マレド、お前は何のための戦争か分かっているのか?我らがデハイバース国を強くして富ませるためには、モーガンウィグを攻めて領土を広げ、北国のイアゴたちをけん制せねばならぬ。それがウェールズ全体のためにもなるだろうよ。でしょ、親父」
「そう、エイニオンの言う通り、モーガンウィグ占領が最善の策だよ。相手を攻撃して領土を広げることをせずに、敵国の脅威に打ち勝ち勢力を増す方法はどこにあるんだ? マレドが言うように攻撃しなかったら、こっちがやられるだけだぞ」
「そ、それは、分かるんですが・・・でも・・・」
「弱腰で悩んでいる暇があるんだったら、少しは勇気を出して戦場で戦ってみたらどうなんだ。それが王室の家系に生まれた、戦士の宿命ってもんだろう」
「つべこべ言わずに、行くぞ!! できるだけ大軍で、素早くモルガン軍を攻め、一気に勝負をつけてしまおう」
エイニオン率いるデハイバース軍は、モルガン王の拠点があるモルガン城を攻め取り囲んだ。しかし、モルガン軍の必死の激しい抵抗に阻まれ、城に攻め込むことはできず、戦いはこう着状態に陥っていた。
「ぶるぶるぶる、あ、兄上、まっまだ戦うつもりですか。もう、攻撃、やめましょよ」
「意気地なしにもほどがあるな。俺はマレドを戦場に連れてくるのは、本当はいやだったんだよ」
「僕も来たくはなかったよ。父上の言いつけだから仕方ないよ。兄上、そろそろ戦いはやめて、家に返ろうよ」
「いや、モーガンウィグ軍の奴らもかなり疲れているはずだ。ここで、奴らに脅しをかけてやろうじゃないか」
「兄上、まだ何かやるんですか・・・」
「そう、やるんだよ。お前が脅してこい」
「ぼ、僕ですか・・・戦うのは怖い・・・無理ですぅ・・・」
「いや、戦うなんてお前には鼻から頼まないよ。マリド、お前が使者になって、伝言を伝えてこいよ」
「そんな所へ、ぼ、僕が行くんですか? エイニオン兄上が行ってくださいよ」
「マレド、お前はデハイバース国王、オウァイン王の息子だぞ。戦えないのなら、そのくらい堂々とやってこい! モーガン王に、「我々に降伏して傘下に入るのなら、命は助けてやろう」と猛者を引き連れて、脅かしてこい!」
「わ、わかりました。こ、こわいけど・・・で、でわ、行ってきます」
ーーーー
「ただいま」
「も、もう帰ってきたのか!お前、本当に脅してきたんだろうな。奴らは受け入れたのか?」
「モーガン王から、同じ言葉を頂戴してきました。「我々に降伏して傘下に入るのなら、命は助けてやろう」」
「あちゃー。マレド、お前それで、のこのこと帰ってきたのか! あ~頭痛い!それはそうと、モーガンの奴ら、我々を完全になめてやがる。おのれ許せぬわ。明日の朝、暗いうちに、奇襲の総攻撃をしかけるぞ!」
「えええええ、や、やめましょうよ!」
「ええい、うるさい。これでは親父に顔も合わせれぬわ」
(ぐずん・・・兄上はきらいだ~~)
ポロポロ、ポロロ~ン
水は清く、緑深く、いのちにあふれる我がウェールズ
小鳥は歌い、動物は踊り、人は楽器を奏でる
生き物はみな、手を取り合い、心を通じ合い
暖かな食事を感謝と共にいただく
今日のことを話し、明日の希望を語り合い
暖かい場所でぐっすりと夢の中で微笑みあう
ゆたかな国ウェールズ、よろこびの国ウェールズ
僕らはみんな、ひとりはみんな
すべての生き物たちが、助けあって喜びあって、感謝しあって
生きていこう
「ふうううう、疲れたな。戦いを中断して、いったん国に引き上げるのも良いかもしれない。おや、俺としたことがどうしたんだろう。モルガン王に対して怒りがなくなってきたようだ。家に帰って親父の顔も見たくなってきた・・・」
「俺としたことが、どうしたんだろう・・・」
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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