こんばんは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。
ウェールズの創作歴史ストーリー、新たたかうカムリ戦士は毎週月曜日に公開しております。先週の内容は、エイニオンがモーガン王を欺き、戦いに勝利しモーガン王を捕らえました。これに不快を示すグウィネズのイアゴが、オウァインとエイニオンの親子を脅しに行こう、という内容でした。
オウァインの息子、最弱戦士のマレドが奏でるハープは、何やら人の心を変える力があるようです。というわけで第5話をお楽しみください。
※先週の第4話
脅迫と
「あにきぃ、今がチャンスだよねぇ~。オウァインのデハイバースもぶん取っちゃいましょうよぉ」
「そうだ! 奴らをつぶしてやろう。父イドワルの雪辱を晴らそうではないか。父の国グウィネズは取り戻したけれど、それだけでは腹の虫がおさまらぬ。父の宿敵であったハウェルの国、デハイバースを攻め、今度は俺たちが奴らを支配してやる」
「うん~っ、そういうの俺は大好きっ。勝ったらさあ、兄貴。俺にも分け前をたんとおくれよね~」
オウァインの父ハウェルは、イアゴとイエウヴの父イドワルと戦い、ハウェルが勝利してイドワルの国グウィネズを支配したのであった。ハウェルが亡くなったとたん、イアゴとイエウヴはグウィネズを奪回し、その勢いに乗ってオウァインが治めるデハイバースへ攻撃をしようと企んでいた。
10年前のウェールズ西部、デハイバース国。
<オウァイン様、オウァイン様! 大変です! イアゴ達が攻めてきました!!>
「なに! グウィネズだけで奴らは満足せぬというのか! 欲の深い奴らめ!いかん、我らに攻め入るとは予測してなかった。うぐぐ、軍備が間に合わぬ」
「兄貴い、デハイバースを攻めて勝ったら、どんな分け前をくれるんだよぉ」
「そうだな、イエウヴ。お前、思う存分、攻撃して略奪してこい。略奪品は全部お前にやるぞ」
「えええっ、全部くれるんすかぁ? うふふふ、僕頑張っちゃお~っと」
イエウヴ率いるグウィネズ軍は、デハイバースに侵入し放火、略奪を繰り返し、デハイバースの北部を何も奪うものがなくなるほど荒廃させた。
「おい、イエウヴ、その辺にしといて、ずらかろうぜ」
「えっ、もう帰るんですかぁ。もうちょっと南まで略奪して、がっぽがっぽ儲けましょうよ」
「オウァインの奴が、軍を集めこちらに向かい始めているようだ。奴らが、ここに到着する前に、俺らは帰るぞ」
「俺の国をこんなにしやがって。イアゴとイエウヴを追え! 奴らに追いつき奪われたものを奪い返せ!」
「くそっ、国境まで来てしまった。逃げ足の速い奴らめ。よし、構わぬ、グウィネズに攻め込むぞ!」
ヒュー、ヒュー、ヒュー、うげっ、バタバタバタ
<グウィネズのロングボウ部隊が潜んでます。オウァイン様、数が多すぎます>
ヒュー、ヒュー、ヒュー、うごっ、バタバタバタ
「うっ!!」
「いかん。これはマズイ、全滅してしまう。デハイバース軍、戦いをやめて撤退だ!全員引けっ!」
10年前のこの戦い、オウァインが治めるデハイバースは略奪で大きく国は荒廃した。結局のところ自分たちの領土をお互い確保して終結はしたものの、常にお互いの動きを監視し、冷戦状態が続いていたのであった。
現在のウェールズ西部、デハイバース国に、イアゴとイエウヴは押しかけた。
「これはこれは、皆さんご丁寧なお出迎え。オウァイン殿、お元気そうでないよりですな」
「イアゴ殿、遠いところ何の御用かな」
「おおお、これはいきなり鋭いご質問。聞いてくださって感謝しますよ」
「オウァインさんよぉ。あなたたち最近、とっても景気がいいそうですねぇ」
「イエウヴ殿、何のお話かな?」
「オウァイン殿、とぼけても無駄ですよぉ。オレらぜーんぶ知ってますからねぇ。いたいた、エイニオン殿。エイニオン殿、あなたモーガンウィグ国に攻め込み、汚い手を使ってモーガン王を捕まえませんでしたかぁ?」
「ぜーんぶ知ってるんですよぉ。領土も奪っちゃったそうですねぇ。景気がよくって、いいですよねぇ」
「・・・」
「黙ってても無駄だよ、早く認めなよ」
「・・・」
「無駄だと言ってるのが分からんのか、くらぁっ。勝手にモーガンウィグを攻めやがって。おおおう、俺らの恐ろしさを知らんのか? また昔みたいに、てめえらを攻めてヒンむいてやるぞ!」
(ふふふ、兄貴ぃ、奴らビビッてますねぇ。ふふふ、脅しがいがありますよねぇ~)
(さすが、イエウヴ。こういう時は、お前の強面の顔が役立つなあ)
「ここで、貴方たちに、チャンスをね、あげますよ~。3択で好きなものをね、選んでくださいよぅ~」
「一つ目、我々グウィネズの傘下に入る。二つ目、奪ったモーガンウィグの領土を半分さしだす。三つ目、いずれも拒否し、我々の総攻撃を受ける。さっ、オウァイン殿。どれを、選びますかぁ?」
「うぬぬぬぬ」
「早く考えてく・だ・さ・い・よ~」
「あ、あのう、お取込み中、しっ失礼します。よろしいでしょうか?」
「誰だお前わぁ?」
「は、はい。マっマレドと申しまして・・・一応、オウァイン王の息子をさせていただいております」
「オウァインの息子? まだこんな弱弱しいクズみたいなのがいたのか? そんでクズくんが何の御用だね?」
「は、はい、イアゴ殿のグウィネズから使者の方が来られまして・・・」
「何の用だ? 何と言ってるのだ?」
「は、はい、それが・・・ヴァイキングの大軍がウェールズに攻めてきたようでして・・・グウィネズとデハイバースで略奪を始めたそうです」
「なに、ヴァイキング? またうっとうしい奴らか。そんなの放っておけ。それより、俺たちはお前たちの答えを待っているんだ。早く答えろ。答え次第によっては、我々はお前らを攻撃する。答えはなんだ?」
「うぬぬぬぬ。三択、どれも受け入れらんな。傘下も領土も拒否し、お前らに攻められるのも拒否する」
「な、なんですと? 俺たちをなめてんじゃねーぞぉ~っ」
「ひぇ~、ごごめんなさい~」
「あ、あのう・・・つかぬことを聞いてもよいでしょうか? つ、つまり四択目はないのでしょうか? 戦いをやめて協力し合うとか・・・つ、つまり・・・協力し合ってヴァイキングを追い出すとか・・・」
「お前ごときクズに何がわかる! 意見するのは100年早いわ。このイアゴ様がオウァインの奴と協力? あり得んな。あり得るのはテメエらをぶっ潰すことだ」
「ひぇ~っ、ご、ごめんなさい・・・うっ、うっ、うっ」
<ポロローン、ポロローン、ポポポローン>
「このイアゴ様がオウァインの奴と協力だと? ふむ、それも有りかもしれぬ。今はウェールズ内で争うより、うっとうしい強敵のヴァイキングを追い払うために、一時休戦して、協力し合ったほうがいいな。どうだね、オウァイン殿」
「俺も同感だよ、イアゴ殿。ぜひ協力し合って、ヴァイキングと戦おう!」
やはり、マレドの演奏するハープは・・・
次回に続く。
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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