ウィリアム・シェイクスピア作の「オセロー」(Othello)は、シェイクスピアの四大悲劇の一つです。
※四大悲劇はオセロー、マクベス、リア王、ハムレット
ヴェニスの軍人であるオセローが、妬みを持つ旗手イアーゴーの策略にはまり、嫉妬と苦しみで妻デズデモーナの殺してしまうが、真実を知ったオセローは自殺する、悲劇です。
「オセロー」には原作があるとされています。
今回は、「オセロー」と原作のあらすじを比較し、共通部分と異なる部分を解説します。
・シェイクスピアの謎 別人説について語る
・シェイクスピアの「ハムレット」と原作「アムレート」のあらすじ
・シェイクスピアの「マクベス」と「実在のマクベス」との違い
・実在の「リア王」とシェイクスピアの「リア王」の共通点と相違点
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シェイクスピア「オセロー」のあらすじ
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■ヴェニスの将軍でムーア人のオセローは、美しいデズデモーナと愛し合っていました。
デズデモーナは父ブラバンショーに、色の黒いムーア人どの結婚を反対されていましたが、駆け落ちしオセローの元で暮らしはじめました。
オセローの部下キャシオーは昇進を決め、オセローとキャシオーを嫌っている旗手イアーゴーはひどく妬みます。
■その頃、サイプラス島にトルコ軍が侵略し、ヴェニスの将軍オセローは軍を引き連れて戦争に行かねばなりませんでした。
トルコ艦隊は全滅し、ヴェニス軍は大勝しました。
■勝利を祝う宴会でイアーゴーは、キャシオーとオセローを陥れようと策略を図ります。
(イアーゴーは忠実で誠実な良い人とのイメージを皆に持たせていた)
・夜警の下戸のキャシオーに酒を飲ませ、仲間を傷つけさせた
・キャシオーがデズデモーナと密通しているとのでっち上げの話を作り、オセローに告げ口をした
・イアーゴーは、オセローがデズデモーナに送った大切なハンカチ(母の形見)を盗み、キャシオーの部屋に置き、密通の証拠品とした
■オセローはイアーゴーの策略にはまり、作り話を信じてしまいます。(誠実を見せかけるイアーゴーを信頼していた)
オセローは、イアーゴーにキャシオーを殺すよう命じました。
■オセローはデズデモーナへの愛と怒りと嫉妬に苦しみながらも、自分の手でデズデモーナを殺してしまいます。
■しかし、イアーゴーの妻のエミリアは、ハンカチを盗んだのは夫であることを告白し、イアーゴーはエミリアを刺し殺して逃げます。
デズモーナを殺してしまったオセローは自殺をします。
オセローの原作「デズモーナとムーア人」
「デズモーナとムーア人」とは?
シェイクスピアのオセローの原作となっているのが、ジョヴァンニ・バティスタ・ギラルディ(Giovanni Battista Giraldi (1504–1573) )によって書かれた「デズデモーナとムーア人)Disdemona and the Moor) 」です。
ジョヴァンニはチンチオ(Cinthio、Cynthius,、Cintio、Cinzioなど)とも呼ばれています。
「オセロー」と「デズデモーナとムーア人」のストーリーは、大まかには同じです。
しかし、何点かの違いが見られます。
シェイクスピアが物語を演劇でより面白くするために、書き直したと考えられます。
登場人物の違い
2つの物語の登場人物を比較します。
「デズデモーナとムーア人」では、登場人物に名前があるのはデズデモーナだけです。
◆主な登場人物の違い
「オセロー」 | 「デズモーナとムーア人」 |
デズモーナ | デズモーナ |
オセロー | ムーア人 |
キャシオ― | 伍長 |
イアーゴー | 旗手 |
エミリア |
旗手の妻 |
※オセローのみ登場
デズデモーナの父ブラバンショウ
部下ロダリーゴー
ストーリーの違い、旗手イアーゴーの妬みの原因
・「デズデモーナとムーア人」では、
旗手(イアーゴー)はデズデモーナに恋をしましたが、デズデモーナから拒絶されました。
このため旗手は、伍長(キャシオー)と浮気をしていると夫のムーア人(オセロー)に信じさせようと企てました。
・シェイクスピアの「オセロー」では、
イアーゴーの企みは、キャシオーとオセローの昇進や成功の妬みであり、この点は異なっています。
「オセロー」では陥れる相手が、デズデモーナからキャシオーとオセローに変化しています。
ストーリーの違い、デズデモーナの死
・「デズデモーナとムーア人」では、
ムーア人と旗手は、砂を詰め込んだストッキングでデズデモーナを殴り殺しましたが、屋根が落ちたことによる事故死に偽装しました。
・シェイクスピアの「オセロー」では、
嫉妬と怒りの末、泣く泣くオセローはデズデモーナを自らの手で殺します。
物語の結末
・「デズデモーナとムーア人」では、
デズデモーナが殺された後、ムーア人と旗手は仲違いをする様になりました。
ムーア人はデズデモーナの親類に、拷問を受けて追放され、そして殺されました。
旗手は悪行を続けましたが、他の罪で投獄され、拷問で死亡します。
・シェイクスピアの「オセロー」では、
イアーゴーの策略による真実を知ったオセローは、自殺する、悲劇です。
ムーア人は旗手とも手を組んで、やや加害者的な感じがあり、最後に殺されても、あまり悲劇を感じません。「オセロー」では、イアーゴーのみが悪の根源で、デズデモーナをはじめオセローもみな被害者として描かれています。
結末のオセローが自殺する場合も、無念さ、苦しみ、後悔の念が伝わり、悲劇さをより高めていると感じます。
・シェイクスピアの謎 別人説について語る
・シェイクスピアの「ハムレット」と原作「アムレート」のあらすじ
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・実在の「リア王」とシェイクスピアの「リア王」の共通点と相違点
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