こんばんは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。スコットランドに関して、特に現在のイギリスがブリタニアと呼ばれていた頃は、ウェールズとも陸続きで深い関係がありました。今後、関連するスコットランドに関してもお話して行こうと思います。
「スコットランドの名前の由来は知ってますか?」
「何でしょうね・・スコット人の土地ってことですか?」
「おお行き成りだが、なかなかいい線をついているね。今回は簡単にスコットランドが成立するまでの歴史について話そうか。特に紀元前後から9世紀頃まで、スコットランドは現在と大きく異なっているんだよ。そして、このブログで主に書いていウェールズとの影響は、とても大きなものがあるんです」
スコットランド王国成立の歴史超概要
「簡単にスコットランドを描いてみると、3つの区域に分けられるんだ」
・ピクトランド(Pictland)
・ブリタニア(地図中のAltClut、Gotoudin付近)
・ダル・リアダ(Dal Riada)
「ブリテン島北部のピクトランドに住んでいたのはピクト人と呼ばれ、スコットランドの北部に住み、身体に青く塗ることでも知られてます。紀元前10世紀に大陸より移住してきたケルト系とも言われているんだよ」
「映画キングーアーサーで顔も青く塗った人が出てきてましたね」
「そうそう。青く塗るのは、宗教的な意味だけでなく、戦場で傷ついたときにばい菌などから皮膚を防ぐ効果もあるそうだよ」
「次に、スコットランドの南部、ブリタニアの一部に住んでいたのがケルト系のブリトン人だ。ブリトン人自体は、紀元前数世紀に大陸から移住したと言われてるよ。紀元前後から5世紀中頃までは、ピクトランドを除くグレートブリテン島の大部分に、このブリトン人は住んでいたんだ(地図中の青色っぽい部分)」
「三つ目の、500年頃から出現したのがダル・リアダだ。このダル・リアダは、スコットランドと呼ばれるようになった事に、深く関連しているんだ」
スコットランドはなぜスコットランドと呼ばれるのか?
「さっき、スコット人って言ったね。その通りで、ブリテン島から海を隔てたアイルランドに住んでいた人々のことをスコット族と呼んだんだよ」
「アイルランド人じゃないのですか?」
「アイルランド人のことを大昔は、スコットと呼んでいたんだ。このスコット族が紀元500年ごろから、海を渡って現在のスコットランド西海岸に侵略し勢力を伸ばしていき、ダル・リアダ王国を作ったんだ」
「スコット族のダルリアダ王国と、ピクト族のアルバ王国(以前はピクトランド)は、何度も争いあった。そして、843年ダル・リアダ王国のケネス一世が、ダル・リアダ王国とアルバ王国を統一して、スコットランド王国が成立したんだよ」
スコットランドとウェールズの関係
「スコットランドとウェールズは切っても切れない深い関係があるんだ。時代をまた紀元前後に戻したところから話そう」
「紀元43年、南部からローマ帝国の襲来に会い、ブリタニアはローマ帝国の支配下に置かれるんだ。各地のブリトン族は抵抗したけど、ローマ軍はどんどん北上して勢力範囲を広げていくんだ。北ウェールズで起きた大規模な抵抗も鎮圧され、残党は現在のスコットランド南部(ブリタニア北部)に落ち延びた、と言われているんだよ」
「その落ち延びたウェールズの子孫たちが、スコットランドに住み着いた、ということですか?」
「そう言われてるんだ。そして、スコットランドのブリタニアの小国々を統治していくんだよ」
「ローマ軍は、もっと勢力を広げていくんですか?」
「ローマ軍は北へ北へ進軍して行き、ピクトランドに接するところまで支配を広げたんだ。そして、ローマ帝国の権力を示しピクト族が南下するのを防ぐため、2世紀にハドリアヌスの長城とアントニヌスの長城を築くんだよ」
「ローマ皇帝の、ハドリアヌス帝と、アントニヌス帝ってことですか?」
「二つの長城で囲まれた付近にはローマ軍も駐在し、ブリタニアの部族達とピクト族やヴァイキングなどの侵入を防いだんだ。しかし、5世紀初めになるとローマ軍はブリタニアから撤退し、ピクトランドとの国境の防備は北部ブリタニアの各小国にゆだねられれることになったんだ」
※このローマ軍について書かれた物語もあります。ローズマリー・サトクリフによる失踪した「第九軍団のワシ」です。
「スコットランドもウェールズもローマから独立、って訳ですね。うまく独立できたんですか?」
「いやあ、ローマ軍の後ろ盾が無くなって逆に苦しくなったんだ。北からはピクト族、西からはスコット族が攻めて来て、ブリタニアは苦境に立たされたんだ」
「スコットランドの南部ブリタニアと、ウェールズに位置する南部ブリタニアは、同じブリタニアの国なので、お互い行き来ができ交流があったんだ。エジンバラ付近の北部ブリタニアに住む、かつてはウェールズの末裔だった部族の首長が、5世紀前半に再びウェールズに移住してスコット族を追い払う為に戦ったんだよ」
「面白いですね。また里帰りしたってことですね」
「しかし、5世紀後半から、ブリタニアに最大の強敵が出現し、あっと言う間に多くの領土を失ってしまうんだ。ゲルマン民族のアングロ・サクソン族が、グレートブリテン島に侵略を始めたのです。ブリテン島の東部から始まり僅か3世紀ほどで、ブリテン島の大部分を征服してしまうんだ。そしてアングロ・サクソン族が作った国がイングランドなのです」
「このイングランドによって残ったブリタニアは分断されてしまうんだ。アングロ・サクソン族に支配されず、残った部分が、北部のピクトランド付近と、西部のウェールズ付近だったのです」
※700年ごろのブリテン島。緑色のイングランドにほぼ占領されてしまった。
「それぞれ、ピクトランド付近とウェールズ付近は、どの様になっていくんですか?」
「ピクトランド付近は先に述べた様に、アイルランドから渡ってきたスコット族の攻撃を受ける様になるんだ。スコット族は、ピクトランドにダル・リアダと言う国を作り、勢力を広げて行くんだよ。そして、ダル・リアダ王のケネス一世が843年にスコットランド王国を作り、更にブリタニア北部の一部も吸収していくんだ」
「ウェールズ付近も、エジンバラ付近に住んでいた北部ブリタニア首長のキネダが、5世紀にグウィネズ国を作り子孫が領土を広げていき、ウェールズの土台を築いたのです」
次回に続く
参考:The Island of Britain AD 450-600
※スコットランドから移住してウェールズの元となる国を建国したキネダの記事
※ローマ時代のブリタニア概要
※青く塗ったピクト族が出てくるアーサー王の映画
※失踪したローマ軍について描かれた物語
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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