中世初め頃、北部ウェールズ(グウィネズ)の王たちを見ると、アーサー王自身やアーサー王物語に登場する場面と、とても似た人物や出来事が多くあります。
アーサー王やアーサー王物語の起源になった可能性もあります。
それぞれについて説明いたします。
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アーサー王と関連深い北ウェールズ王家の家系図
5世紀~6世紀にかけての北ウェールズの王室の家系図を示します。赤字は関連するアーサー王物語の登場人物を表しています。
①エイニオン・イース(ウーサー王との共通点)
ウェールズ王室の創始者のキネダには、8人の息子がいました。その中で、エイニオンが最も優秀だったため、全体の統治者を後継しました。
エイニオンの正式名はEinion ap Cuneddaですが、イース(Yirth)というあだ名がついていました。(イースとは、ウェールズ語で「せっかち」という意味です)
このYirthというあだ名は、アーサー王の父ウーサー(Uthur)にも似ていますし、Arthurにも似ています。もし、エイニオン・イースが、ドラゴンのついた兜をかぶっていたとしますと、
Yirth・pen・dragon(イース・ペン・ドラゴン)となり、ウーサーを連想しますね。
②カドワロン・ロングハンド(クラデルマント王)
エイニオンの後は、カドワロン(Cadwallon ap Einion)が後継しました。カドワロンには長い手(Long Hand(ウェールズ語でLawhir))というあだ名がついており、長い手を活かし、身体を曲げずに足元の石を拾いカラス(敵)をやっつけたと言われています。つまり、優秀な戦士だったようです。
アーサー王物語にアーサー王が王になった頃に、11人の王たちがアーサー王に反逆した場面がありました。
その中の1人にクラデルマント王がおり、カドワロンがモデル人物になっていると言われています。(後にクラデルマント王はアーサー王と和解し共に戦った)
👉クラデルマント王について
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③オワイン・ダントグウィン(アーサー王?)
兄ロングハンドとともにグウィネズの領土を拡大してきたのがオウァイン(Owain ap Einion)です。
オウァインにはダントグウィン(Ddantgwin、白い歯(White tooth)の意味)のあだ名を持っていました。
活躍をしたオウァインは兄の後継者に選ばれていましたが、それを不服に思ったロングハンドの息子マエルグウィンでした。
2人は北ウェールズの、カムランの谷で激突し、オウァインはマエルグウィンに敗北して戦死しました。そして、マエルグウィンが王になりました。
オウァインのあだ名である「白い歯」は「白く煌めく剣」とも読み取れ、エクスカリバーを連想させます。
また「カムランの谷」とは、アーサー王とモルドレッドが戦ったカムランで、「甥のマエルグウィン」とはモルドレッドではないか、とも想像がつきます。
つまり、オウァイン・ダントグウィンは、一戦士であったアーサーのモデルになったのでは?とも考えれます。
👉オワイン・ダントグウィンの記事
アーサー王と多くの共通点を持つオワイン・ダントグウィン
④マエルグウィン・グウィネズ(100人の騎士の王、モルドレッド)
カムランの谷の戦いで叔父オワインを倒して、北ウェールズの王になったのがマエルグウィン(Maelgwyn ap Cadwallon)です。マエルグウィンは勢力を広げ、当時のブリタニアの中では大きな権力を持ったことから、マエルグウィン・グウィネズ(Maelgwyn Gwynedd)とも呼ばれています。
マエルグウィンは、強力な騎士「百人の騎士の王マラグウィン」の モデルとされ、父カドワロンと共にアーサー王物語の中にも登場しています。
また、マエルグウィンは叔父オワインとカムランの谷で戦った状況から、モルドレッドのモデルになったとの説もあります。
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⑤クネグラシス(アーサー?)
オワイン・ダントグウィンの息子に、クネグラシス(CuneglasusまたはCynlas ap Owain)がいました。クネグラシスについては殆ど分かっていませんが、Goch(赤の意味)のあだ名があり、レッドドラゴンを連想させます。
また、熊というあだ名(Arth)を持ち、北ウェールズのディン・アース(Din Arth)に住んでいたことから、アーサー王を連想しますね。
最後にまとめ
ご紹介しましたように、中世のウェールズの王たちは、アーサー王物語とも深い関係があり、とても興味深いです。
ウェールズの歴史を知っていただくと、さらにアーサー王物語も楽しめると思います。
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